日本近海の海底には豊富な地下資源が存在することが分かってきています。燃える液体と言われるメタンハイドレートや天然ガス、コバルト等です。
いままで日本は資源のない国で輸入に頼ってきましたが、一気に資源大国に様変わりする可能性を秘めています。主な特徴は以下の通りです。
メタンハイドレートが、日本近海に豊富に眠っている
- 資源の種類:
- メタンハイドレート
- 海底熱水鉱床(金、銀、銅、亜鉛、鉛など)
- コバルト・リッチ・クラスト
- 石油・天然ガス
- 埋蔵量:
- メタンハイドレートは約12.6兆m³と推定され、日本の天然ガス消費量の約100年分に相当
- 海底熱水鉱床とコバルト・リッチ・クラストを合わせて約300兆円相当の価値があるとされる
- 分布:
- メタンハイドレートは太平洋側(砂層型)と日本海側(表層型)に存在
- 海底熱水鉱床は沖縄トラフや伊豆・小笠原海域に多く存在
- 開発状況:
- 技術開発と調査が進められているが、商業化にはまだ課題がある
- 水中ドローンなどの新技術を活用した調査が行われている
- 課題:
- 採掘コストの高さ
- 環境への影響
- 技術的な難しさ
- 期待:
- エネルギー自給率の向上
- 資源大国としての可能性
- 経済効果
これらの資源開発を進めるためには、国家的な取り組みと投資が必要とされています。同時に、環境への配慮も重要な課題となっています。
メタンハイドレートには、2種類のタイプがある
- 砂層型メタンハイドレート
- 表層型メタンハイドレート
メタンハイドレートの埋蔵量はどれくらいなのか
メタンハイドレートの埋蔵量と供給可能年数について以下のようにまとめられます:
- 推定埋蔵量:
- 日本近海のメタンハイドレートの埋蔵量は、約1.1兆m³と推定されています。
- 供給可能年数:
- この埋蔵量は、日本の天然ガス消費量の約10年分に相当するとされています。
- 技術的可採埋蔵量:
- ただし、これは原始資源量であり、実際に採掘可能な量(技術的可採埋蔵量)はこれより少なくなる可能性があります。
- 「中間的シナリオ」として、原始資源量の50%が技術的可採埋蔵量になると仮定する考え方もあります。
- 表層型メタンハイドレート:
- 上記の推定は主に砂層型メタンハイドレートに関するものですが、表層型メタンハイドレートも存在します。
- 例えば、上越沖の1か所だけでも約6億立方メートル分のメタンガスに相当するメタンハイドレートが存在するとの情報があります。
- 不確実性:
- メタンハイドレートの実際の埋蔵量や採掘可能な量については、まだ不確実性が高く、継続的な調査や研究が必要です。
したがって、現時点での推定では日本の天然ガス消費量の約10年分に相当するメタンハイドレートが存在すると考えられていますが、実際に採掘可能な量や供給可能年数については、今後の技術開発や詳細な調査結果によって変動する可能性があります。
メタンハイドレートの回収技術はどの程度進んでいるの
メタンハイドレートの回収技術の進捗状況について、以下のようにまとめることができます:
- 現状:
- 過去の海洋産出試験で数週間程度のガス生産を達成しています。
- しかし、事前の予測と実際の生産挙動にはかい離が見られ、長期的な挙動や長期安定生産はまだ実現できていません。
- 技術開発の段階:
- 現在は生産方法を確立しようとしている段階にあります。
- 安定して大量生産するための技術はまだ検証段階です。
- 目標:
- 商業生産のためには、1つの生産井で5~10年程度の連続ガス生産が必要とされています。
- まずは陸上で安定生産する技術を確立し、その後海上での生産に移行する必要があります。
- 課題:
- 生産挙動予測の信頼性向上
- 生産の安定性向上
- 海洋における一定期間の生産が可能な技術の実現
- 研究開発の取り組み:
- 表層型メタンハイドレートの回収技術に関する調査研究が行われています。
- 2019年度に有望技術の抽出を実施し、採掘技術、分離技術、揚収技術などの要素技術の開発が進められています。
- 評価と今後の方向性:
- 定期的に研究成果の評価が行われ、次年度の研究計画に反映されています。
- 経済性の基準を達成するガス生産レートの実現可能性を評価するための情報収集が進められています。
総じて、メタンハイドレートの回収技術は着実に進展していますが、商業化に向けてはまだ多くの技術的課題が残されており、継続的な研究開発が必要な段階にあると言えます。
メタンハイドレートの開発に必要なコストはどれくらいの額なのか
メタンハイドレートの開発コストについては、現時点で正確な金額を特定することは難しいですが、以下のような試算がされています。
- 生産価格の試算:
- ある試算では、メタンハイドレートの生産価格は46〜174円/m³と幅広い範囲で見積もられています。
- この試算の中間的な数字として、約100円/m³が仮定されています。
- コストの不確実性:
- メタンハイドレートの開発はまだ研究段階にあり、商業化に向けた技術が確立していないため、正確なコスト予測は困難です。
- 埋蔵量の推定も部分的な段階であり、全体的なコストを算出するのは現時点では難しい状況です。
- 経済性の評価:
- メタンハイドレートの経済性は、天然ガスの輸入価格など外的要因に大きく左右されます。
- 数年前までは100円/m³の生産価格は経済的に成り立たないと考えられていましたが、環境の変化により評価が変わってきています。
- 今後の課題:
- 長期的な安定生産の実現
- 商業化に向けた技術開発
- コスト削減
- 開発計画:
- 2023年度から2027年度の間に、民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトの開始を目指しています。
結論として、メタンハイドレートの開発に必要な具体的な総コストは、現時点では明確ではありません。
技術開発の進展や外部環境の変化によって、今後コストの見積もりがより明確になっていきます。
メタンハイドレートの開発に必要な技術
メタンハイドレートの開発に必要な技術的進展について、以下のようにまとめることができます:
- 現状の達成点:
- 過去の海洋産出試験で数週間程度のガス生産を達成しています。
- 生産方法の確立に向けた研究が進行中です。
メタンハイドレートの開発には複数の企業や組織が関わっています。主な開発主体は以下の通りです:
日本メタンハイドレート調査株式会社 (JMH)
- 石油・天然ガス開発企業やエンジニアリング企業など計11社が参加
- 国が実施する砂層型メタンハイドレート開発に関する中長期の海洋産出試験等に参画することを目指している
研究開発コンソーシアム「MH21-S」
- 産業技術総合研究所 (産総研)
- 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 (JOGMEC)
- 日本メタンハイドレート調査株式会社 (JMH)
- 砂層型メタンハイドレートの研究開発を行っている
これらの組織は、オールジャパン体制で効率的、効果的に開発を進めることを目指しています。また、将来的には民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトの開始が計画されています。
ビジネスeye
メタンハイドレートの開発が進めば、日本のエネルギー政策に以下のような影響があると考えられます:
- エネルギー自給率の向上:
- 日本周辺海域に大量に存在するメタンハイドレートは貴重な国産資源です。
- 商業化が実現すれば、日本のエネルギー自給率(現在約7%)を大幅に向上させる可能性があります。
- エネルギー安全保障の強化:
- 国内資源開発により、地政学的リスクに左右されない安定的なエネルギー供給が可能になります。
- 輸入依存度を下げることで、エネルギー供給の安定性が向上します。
- 新たなエネルギー源の確保:
- メタンハイドレートは次世代エネルギー資源として期待されています。
- 石炭や石油に代わる新たなエネルギー源として活用できる可能性があります。
- 環境への影響:
- メタンハイドレートは、石炭や石油と比べてCO2排出量が約30%少ないとされています。
- ただし、メタンガスの漏洩リスクなど、環境への影響については慎重な評価が必要です。
- 技術開発と産業振興:
- メタンハイドレート開発の技術は日本が世界をリードしており、この分野での産業競争力を強化できる可能性があります。
- 関連技術の発展により、新たな産業や雇用の創出が期待できます。
- エネルギー政策の多様化:
- 水素やアンモニアの原料としての利用も視野に入れられており、エネルギー政策の選択肢が広がります。
- 長期的なエネルギー戦略への影響:
- 商業化までには時間がかかるため、短期的な影響は限定的ですが、長期的なエネルギー戦略に大きな影響を与える可能性があります。
メタンハイドレートが実用化されれば、資源大国になります。メタンハイドレート以外にも地下資源はありますの開発技術の向上が待ち遠しいですね。