日本国内のM&A市場の潜在的な規模は約13兆5000億円と推定されています。

事業承継型企業、つまり社長の年齢が60歳以上の企業は約9万3536社存在しており、これらの企業がM&A市場の大きな需要源となっています。

M&A市場は、後継者不足などの問題により拡大傾向にありましたが、2020年はコロナ禍の影響で一時的に縮小しました。しかし、最近の動向を見ると、回復の兆しが見られます。

2023年1月から9月の期間において、日本企業が関与したM&A取引の総額は約1110億円と、前年同期比で約14%増加しています。

これは、国内企業間でのM&A取引(In-In型)が増加傾向にあることを示しています。

一方で、日本企業による海外企業の買収(In-Out型)はコロナの影響で一時的に縮小しましたが、2021年以降の動向が注目されています。

さらに、M&Aの市場規模を考える上で重要なのは、単なる取引金額だけでなく、M&Aを通じた企業の事業再編や経営改革の効果も考慮する必要があります。

M&Aは単なる企業買収だけでなく、事業の再構築や経営の効率化など、企業の成長戦略の一環として活用されています。

M&A増加の背景

M&Aが増加している主な背景は以下の通りです。

  1. 事業承継の課題
    • 日本の中小企業の多くは、経営者の高齢化に伴い後継者不足に悩んでいます。
    • M&Aは事業承継の選択肢の1つとして注目されており、事業の継続と発展につながっています。
  2. 産業再編の加速
    • 少子高齢化や技術革新の影響で、多くの業界で企業間の再編が進んでいます。
    • 企業は規模の拡大や事業ポートフォリオの最適化を目的にM&Aを活用しています。
  3. M&Aサービスの拡充
    • 中小企業向けのM&Aアドバイザリーサービスが充実してきました。
    • 企業が自社の課題解決やグロースに向けてM&Aを検討しやすくなっています。
  4. 金融緩和の影響
    • 低金利環境が続いており、M&Aを活用した事業拡大が容易になっています。
    • 企業の資金調達が比較的容易になったことも、M&A増加の一因となっています。

さらに、M&Aは単なる企業買収だけでなく、事業の再構築や経営の効率化など、企業の成長戦略の一環として活用されています。

企業は、M&Aを通じて新しい事業領域への進出や、既存事業の強化・再編などを図っています。

以上のように、事業承継の課題、産業再編の加速、M&Aサービスの拡充、金融緩和の影響など、様々な要因がM&Aの増加につながっています。

今後も、企業の成長戦略の一環としてM&Aの活用が期待されます。

起業時からM&Aを目指すというビジネスのやり方もここ最近で増えてきています。

スタートアップのM&A目的

スタートアップ企業がM&Aを目指す主な理由は以下の通りです。

  1. EXIT戦略の一環
    • スタートアップにとって、M&Aはイグジット(事業売却)の重要な選択肢の1つです。
    • 創業者にとって、M&Aはリスクを最小限に抑えつつ、自身の利益を確定させる機会となります。
  2. シナジー効果の期待
    • 大企業がスタートアップを買収する場合、相互の事業や技術の融合によるシナジー効果が期待されます。
    • スタートアップは大企業のリソースやネットワークを活用できるため、事業拡大につながります。
  3. ブランド力の向上
    • 大企業によるスタートアップの買収は、スタートアップのブランド力や社会的信頼性を高めます。
    • これにより、優秀な人材の採用にも有利になります。
  4. 資金調達の容易化
    • M&Aはスタートアップにとって重要なイグジット手段の1つです。
    • M&A(部分売却含む)によって、外部から直接的に資金を調達できるようになり、事業拡大が容易になります。

さらに、スタートアップにとってM&Aは、自社の弱点を補完したり、新しい事業領域への進出を実現する機会にもなります。

大企業とのコラボレーションによって、スタートアップの技術やアイデアが大きく発展する可能性もあります。

以上のように、スタートアップがM&Aを目指す背景には、創業者の利益確定、事業拡大、ブランド力向上、資金調達の容易化など、様々な要因が存在します。

M&Aは、スタートアップにとって重要な成長戦略の1つといえるでしょう。

また、経営者の高齢化の問題もあり、事業承継で、会社を売却する経営者も増えています。

事業承継はM&Aの一形態として重要な位置づけにあります。事業承継について詳しく見ていきましょう。

事業承継とM&Aの関係とは

  • 事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを指します。
  • 経営権や経営資源(人、資産、知的資産)が後継者に引き継がれます。
  • 単なる株式や代表者の交代だけでなく、経営資源の引き継ぎも重要な要素となります。

事業承継の方法

事業承継には主に3つの方法があります。

  1. 内部承継
    • 家族や従業員への引き継ぎ
    • 経営者の子供や親族、長年勤めてきた従業員への承継
  2. 第三者承継(M&A)
    • 社外の第三者への事業承継
    • 近年、家族や従業員の後継者不足から増加傾向
  3. MBO(Management Buy Out)
    • 経営陣による自社買収
    • 経営者が自社の株式を取得し、経営権を取得する方式

事業承継は企業の存続と発展に不可欠な取り組みです。

後継者の確保や経営資源の引き継ぎなど、慎重な検討が必要となります。

特に第三者承継(M&A)は、企業の再編や事業再構築につながる重要な選択肢の1つといえます。

事業承継の方法を適切に選択し、計画的に実行することで、企業の持続的な成長が期待できます。

事業承継は企業にとって大きな転換点となるため、十分な準備と検討が不可欠です。

M&Aの経済への影響

主な影響は以下の通りです。

  1. 生産性の向上
    • 企業間のM&Aによって、技術やノウハウの融合が進み、生産性が向上する可能性があります。
    • 実際に、M&Aを実施した国内企業では、生産性の伸び率が高まっているという研究結果があります。
  2. 経済全体の活性化
    • M&Aを通じた企業の事業拡大は、経済全体の活性化につながります。
    • 新しい事業領域への進出や、企業間のシナジー効果が期待できるため、経済全体の生産性向上にも寄与します。
  3. 競争力の強化
    • M&Aによって企業の規模が拡大し、国際競争力が高まる可能性があります。
    • 大企業と中小企業の連携など、企業間の協業が進むことで、全体としての競争力が強化されます。

さらに、M&Aは企業の事業再編や構造改革を促し、経済の新陳代謝を活性化させる効果も期待できます。

優良企業の淘汰と新興企業の台頭により、経済全体の生産性向上につながるのです。

以上のように、M&Aの増加は、企業の生産性向上、経済全体の活性化、競争力強化など、様々な面で前向きな影響を及ぼすことが期待されます。

ただし、M&Aには慎重な検討が必要な側面もあるため、その影響を十分に考慮する必要があります。

M&Aは小型なものから大型なものまでかなりの数の案件があります。全てがすんなりと売買が成立するものではありませんが、確実に日本経済の成長要因となります。

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