スイングバイIPOとは スイングバイIPOは、スタートアップが大手企業の傘下に入り、その力を借りて成長した後に再度IPOを行う手法のことです。
「スイングバイ」は宇宙探査の用語で、惑星の重力を利用して加速する技術を指しています。
スタートアップにとっては、大手企業の資金力やノウハウを活用しながら、自社の成長を加速させることができるメリットがあります。
スイングバイIPOのメリット
- 資金調達の容易化: 大手企業の傘下に入ることで、資金調達が容易になる
- 事業基盤の強化: 大手企業のリソースやネットワークを活用できる
- ブランド力の向上: 大手企業のブランド力を借りることで、自社のブランド力も高まる
- 経営ノウハウの習得: 大手企業のノウハウを学べる
スイングバイIPOの事例
- ソラコム: KDDI傘下に入り、その後IPOを果たした
- Mercari: ヤフー傘下に入り、その後IPOを実現した
新しい動向: 「スイングバイ2.0」
最近では、大手企業がスタートアップを買収した後、再度IPOを目指す「スイングバイ2.0」の動きも出てきています。
これは、大手企業がスタートアップの成長を後押しし、より大きな価値を生み出すことを目指す新しい手法です。
総合的に見ると、スイングバイIPOはスタートアップにとって有効な成長戦略の1つと言えるでしょう。
大手企業との協業を通じて、自社の事業基盤を強化しながら、IPOを目指すことができます。
今後もこの手法が注目されていくと考えられます。
子会社上場とは違うスイングバイIPOの意味
上場会社の子会社を上場させることは過去にも多数事例がある。
この場合、上場子会社は設立から上場会社が出資をしてリソースを提供している場合が多い。
スイングバイIPOは、設立時は資本も人的関係もないところから、資本関係を作り、人的リソースなどを投入して持分法適用会社や子会社として事業を拡大してIPOに至るため、設立初期の取組が違う。
スイングバイIPOの場合、上場会社の出資方針に合致している必要があり、どのスタートアップ企業も投資を受けられるということではない。
また、スイングバイIPOだと、IPO時には、増資および株式の売出しにより、持分比率が変化し、その上場会社のグループから外れる可能性もあることから、文字通りスイングバイとしてパワーを貯めて、一気に加速していくイメージだ。
子会社IPOであれば、持ち株比率を維持するなどの力学も生まれるのだが、スイングバイIPOはそういうこだわりは薄いと言える。
もちろん、その上場会社のグループ企業として継続的に事業を拡大させるという選択もある。
どちらにしても、スイングバイIPOは、株主を含むステークホルダーにとって、魅力的な取り組みだと言える。
スイングバイIPOは、スタートアップ企業支援策の成果
ここ最近の傾向として、スタートアップ企業はある程度事業を成長させたら、上場会社にM&Aで会社ごと売却するケースも多くなっている。
M&Aを選ばないスタートアップ企業は、IPOをして出口を探すことになるが、スタートアップ企業単独では、なかなかIPO基準まで到達するのに時間と労力と資金がかかる。
そこで、上場会社のグループに入り、豊富なリソースを共有してもらうことで、短期間で事業をIPO基準まで成長させるスタートアップ企業が増えた。
これは、上場会社にとってもメリットがある。
上場会社としては、新規事業を始めるハードルが意外と高く、四半期毎に決算開示をしている関係上、中長期的に事業投資をして成果が出るまで赤字を出し続けるという時間的余裕がなくなっている。
それであれば、自社で新規事業を始めるよりは、スタートアップ企業に出資して、自社グループ内に取り込んだ方が得策だと考えている。
この四半期毎の決算開示は、投資家にとっては有益な情報開示であるが、中長期的な事業成長を阻害しているというデメリットもあり、長い目でみると、上場会社の事業成長の芽を潰しているのだ。
投資家は、悪い決算が出て、株価が下がることに耐えられないからだ。
スタートアップ企業にとっても上場会社にとってもスイングバイIPOというのは、お互いの事業成長機会としてwin-winな関係だ。
IPO後のスタートアップの成長戦略について詳しく説明しましょう。
IPO後のスタートアップの成長戦略
- 利益率と成長力の維持: IPO後も高い利益率と成長力を維持することが重要です。そのためには、事業の選択と集中、コストコントロール、新規事業の開発などが必要とされます。
- 新規事業への投資: IPO資金を活用して、新しい事業領域への投資や M&A を行い、事業の多角化や新たな成長機会の創出を図ります。
- グローバル展開の加速: IPO後は資金調達力が高まるため、海外市場への進出や海外企業との提携などグローバル展開を加速させることができます。
政府の支援策
日本政府は、スタートアップの成長を後押しするため、「スタートアップ育成5か年計画」を策定しています。
この計画では、スタートアップの資金調達や人材確保、規制緩和などの環境整備を進めることで、スタートアップの成長を支援しています。
総合的に見ると、IPO後のスタートアップにとって、大手企業とのコラボレーション、利益率と成長力の維持、新規事業への投資、グローバル展開の加速が重要な成長戦略となります。
政府の支援策も追い風となっています。
まとめ
KDDIは次のスイングバイIPO銘柄を創出できるか、注目だ。
他の上場会社もスタートアップ企業支援には積極的で、今後ますますスイングバイIPOが増えていくと見込んでいる。
日本政府もユニコーン企業創出という目標を掲げていて、どんなIPO事案が出てくるか、今後も楽しみだ。