ニュースでエクシア合同会社の破産について連日報道されているのですが、改めてエクシア詐欺の詳細をお伝えします。
エクシア合同会社破産の被害額と詐欺の概要
エクシア合同会社(墨田区)は2024年10月18日に東京地裁より破産開始決定を受けました。破産管財人には小田切豪弁護士が選任されています。
詐欺被害の規模は、約9,000名の投資家から約850億円の出資を受けていて、2021年8月1日時点で、累計出資者数1万112人、累計出資総額561億円と公表されていました。
それらの出資を受けていたエクシア合同会社は事業性融資、個人向け不動産融資、プライベートエクイティ投資事業を展開していました。
エクシア合同会社が破綻を招いた問題点
1. 高利回りの謳い文句:2016年から2021年にかけて、年利18.4%から97.4%という高い水準の利回りを公表
2. 急激な成長:売上高が2017年12月期の1億7,617万円から2019年12月期には24億186万円へ急増
3. 法的グレーゾーン:合同会社の社員権取得勧誘が金融商品取引業に該当しないという法の抜け穴を利用
エクシア合同会社が破綻に至る経緯
1. 2021年秋頃:SNSなどで不信感が広がる
2. 2022年春頃:出資や持分の払戻請求が相次ぎ、制限を実施
3. 2022年6月:証券取引等監視委員会が法改正の必要性を建議
4. 2022年夏頃:被害対策弁護団が立ち上がり、投資家との訴訟が相次ぐ
5. その後:本社移転や代表社員・社名変更など、経営の混乱が続く
エクシア合同会社の詐欺被害者の状況
- ある夫婦は8,700万円を投資し、全額が返金されないまま
- 裁判費用や弁護士費用の負担も重く、経済的に困窮している被害者も存在
エクシアの破産は、高利回りをうたう投資商品の危険性と、適切な規制の必要性を浮き彫りにした事例といえます。
エクシア合同会社が社員権を高利回りで販売
エクシアの社員権が高い利回りを謳っていた理由については、以下のような点が考えられます。
1. 投資家を引き付けるための誇大広告:エクシアは「元本保証で月利3%」という非現実的に高い利回りを謳っていました。これは複利での年利換算で43%にもなり、通常の投資では考えられない高水準です。
2. ポンジ・スキームの可能性:新規投資家から集めた資金を既存投資家への配当に回すという、いわゆるポンジ・スキーム(自転車操業)を行っていた可能性があります。
3. 法的グレーゾーンの利用:合同会社の社員権取得という形式を取ることで、金融商品取引法の規制を回避し、高利回りを約束することができました。
4. リスクの隠蔽:高いリターンには通常高いリスクが伴いますが、エクシアはそのリスクを適切に開示せず、安全な投資であるかのように装っていた可能性があります。
5. 実態のない事業モデル:エクシアが主張していた事業や投資先が実際には存在せず、または大幅に誇張されていた可能性があります。
これらの要因により、エクシアは現実的ではない高い利回りを提示し、多くの投資家を引き付けることができたと考えられます。しかし、このような非現実的な高利回りは持続不可能であり、最終的に破綻にしました。
エクシアの社員権の勧誘方法
エクシアの社員権の勧誘方法については、よくある手法を大々的に行っていました。
1. 多数の従業員による勧誘:エクシアは多くの従業員を通じて、不特定多数の投資家に対して社員権の取得を勧誘していました。
2. 様々な勧誘手段:電話、インターネット、投資セミナーなど、多様な手段を用いて勧誘を行っていました。
3. 幅広い年齢層へのアプローチ:高齢者から若年層まで、幅広い年齢層の投資家を対象に勧誘を行っていました。
4. 高利回りの謳い文句:「マージンが入る」「利回りがよい」といった高利回りを強調する勧誘が行われていました。
5. 法的グレーゾーンの利用:エクシアは、合同会社の社員権取得という形式を取ることで、金融商品取引法の規制を回避していました。
6. 自己募集の主張:エクシアは従業員による勧誘を「当社従業員による自己募集は私募」と主張し、法律上の規制を回避しようとしていました。
これらの勧誘方法により、エクシアは多くの投資家から出資を集めることに成功しましたが、同時に投資家とのトラブルや法的問題を引き起こす結果となりました。
エクシアの社員権取得勧誘が投資家の信頼を得ていた主な要因
1. 高利回りの謳い文句
エクシアは非常に高い利回りを約束していました。2016年から2021年にかけて、年利18.4%から97.4%という驚異的な水準の利回りを公表していました。このような高利回りは投資家の関心を引きつける大きな要因となりました。
2. 急成長する企業イメージ
売上高が2017年12月期の1億7,617万円から2019年12月期には24億186万円へと急増していました。この急成長は、エクシアが成功している企業であるという印象を与えました。
3. 多様な事業展開
事業性融資、個人向け不動産融資、プライベートエクイティ投資事業など、複数の事業を展開していると主張していました。これにより、リスクが分散されているように見え、投資家に安心感を与えていました。
4. 法的グレーゾーンの利用
合同会社の社員権取得という形式を取ることで、金融商品取引法の規制を回避していました。これにより、通常の金融商品よりも高い利回りを提示することができました。
5. 積極的な勧誘活動
多数の従業員を通じて、電話、インターネット、投資セミナーなど多様な手段を用いて積極的に勧誘を行っていました。これにより、幅広い年齢層の投資家にアプローチしていました。
6. 初期投資家への高配当
ポンジ・スキームの特徴として、初期の投資家には実際に高い配当が支払われていた可能性があります。これが口コミで広がり、新たな投資家を引き付ける要因となりました。
7. 代表者の経歴の誇張
代表の菊池翔氏を「天才的なトレーダー」として宣伝し、FX取引で高い利益率を達成したという伝説を広めていました。これが投資家の信頼を得る一因となりました。
これらの要因が組み合わさり、エクシアは多くの投資家から信頼を得て、大規模な資金を集めることに成功しました。
しかし、結果的にこの事業モデルは持続不可能であり、多くの投資家に損害を与える結果となりました。
エクシアの社員権販売が当局の監視を避けていた主な方法
1. 合同会社形態の利用
エクシアは本体を合同会社として設立しました。これにより、金融取引会社などに課せられる規制から逃れることができました。合同会社の形態を取ることで、金融商品取引業の登録を必要とせずに社員権の販売が可能でした。
2. 子会社による金融取引業の登録
エクシアは「エクシア・アセット・マネジメント」と「エクシア・デジタル・アセット」という子会社を設立し、これらの会社に金融取引業の免許を取得させました。
一方で、実質的なファンドであるエクシア本体は合同会社のままで、金融取引業の免許を取得しませんでした。
3. 資金の海外移転
集めた資金をシンガポールにある子会社「EXIA Private Limited」に貸し付けるという形で海外に移転させました。これにより資金の流れが複雑化し、当局による追跡を困難にしました。
4. 自己募集の主張
エクシアは従業員による勧誘を「当社従業員による自己募集は私募」と主張し、法律上の規制を回避しようとしていました。
5. 法的グレーゾーンの利用:
合同会社の社員権取得という形式を取ることで、金融商品取引法の規制を回避していました。
これらの方法を組み合わせることで、エクシアは長期間にわたって当局の監視を避け、多数の投資家から資金を集めることができました。
しかし、最終的にはこの手法が問題視され、法改正により合同会社の社員権の募集は業務執行社員以外が行う場合、金融商品取引業の登録が必要となりました。
エクシアの社員権販売は、以下の点で法改正に大きな影響
エクシアの社員権販売は、以下の点で法改正に大きな影響を与えました。
1. 法的グレーゾーンの露呈
エクシアは合同会社の社員権取得という形式を利用して、金融商品取引法の規制を回避していました。これにより、通常の金融商品では不可能な高利回りを謳うことができました。この法的抜け穴が明らかになったことで、法改正の必要性が認識されました。
2. 証券取引等監視委員会の建議
2022年6月21日、証券取引等監視委員会は、合同会社の社員権の取得勧誘について、金融商品取引業法の登録が必要な範囲を拡大するなどの措置が必要と建議しました。これはエクシアの事例を踏まえたものでした。
3. 金融商品取引法の改正
上記の建議を受けて、2022年10月に金融商品取引法が改正されました。この改正により、合同会社の社員権の募集は、業務執行社員以外が行う場合、金融商品取引業の登録が必要となりました。
4. 投資家保護の強化
エクシアの事例により、合同会社の社員権取得勧誘における投資家保護の不十分さが明らかになりました。法改正はこの問題に対応し、投資家保護を強化することを目的としていました。
5. 金融庁の注意喚起
エクシアのような事例を受けて、金融庁は「合同会社等の社員権の取得勧誘にご注意ください!」という注意喚起を発表しました。これは、同様の手法を用いた他の事業者による被害を防ぐための措置でした。
これらの点から、エクシアの社員権販売は、合同会社の社員権取得に関する法規制の不備を浮き彫りにし、法改正を促す直接的な要因となったと言えます。
エクシアのような投資詐欺を防ぐためのチェックリスト
エクシアのような投資詐欺を防ぐためのチェックリストを以下にまとめてみました。
1. 非現実的な高利回りを謳っていないか
- 年利18%以上など、通常ありえない高い利回りを約束していないか確認する
2. 金融庁への登録状況
- 事業者が金融庁に正式に登録されているか確認する
3. 勧誘方法の適切性
- 「必ず儲かる」「元本保証」などの断定的な表現を使っていないか
4. 事業内容の透明性
- 具体的な投資対象や運用方法が明確に説明されているか
5. 法的な位置づけ
- 合同会社の社員権など、法規制の抜け穴を利用していないか(2024年に合同会社の社員権については規制が強化されました。)
6. 資金の流れ
- 資金がどのように運用され、どこに移転されるのか明確か
7. 企業の実態
- 実際の事業実績や財務状況が確認できるか
8. 勧誘者の身元
- 勧誘している人物の所属や資格が明確か
9. 急かす手法
- 「今だけ」「あなただけ」など、急いで判断を迫っていないか
10. 第三者の評価
- 中立的な立場からの評価や情報が得られるか
これらの項目をチェックし、少しでも疑問や不安がある場合は、投資を控えるか、専門家や公的機関に相談することをお勧めします。
投資詐欺は手口が巧妙化しているため、常に注意を払い、慎重に判断することが重要です。
投資詐欺を防ぐためにさらに具体的にチェックするポイント
1. 投資先の信頼性確認
- 公式ウェブサイトで会社の歴史、経営陣、サービスを調査
- 金融庁などの規制当局での登録状況を確認
- 信頼できるレビューサイトや投資フォーラムで評価をチェック
- 物理的な所在地と実際の業務実態を確認
- 有効な連絡先情報(電話番号、メールアドレス)を確認
- 経営陣や主要スタッフの経歴と実績を調査
2. 投資条件とリスクの理解
- 投資契約書を詳細に確認し、不明点をチェック
- 手数料やその他のコストが明確に示されているか確認
- リスクについての詳細な説明があるか確認
- リターンが現実的で、異常に高くないか確認
3. 過去のパフォーマンスと実績調査
- 過去のパフォーマンスデータを入手し確認
- 外部の独立した監査機関による監査報告書の有無を確認
- 投資先のパフォーマンスを市場平均と比較
4. 認可と規制の確認
- 金融庁などの規制当局への登録を確認
- 信頼できる業界団体への加盟を確認
- 関連する規制や法律の遵守状況を確認
- 規制当局からの警告や制裁の有無を確認
5. 専門家の意見を求める
- 資格を持つ経験豊富な投資アドバイザーに相談
- 複数の専門家の意見を聞く
- 弁護士に投資契約書の確認を依頼
6. 警告サインに注意
- 異常に高いリターンの約束に警戒
- リスクの説明が不足していないか確認
- 急かされる勧誘に注意
- 質問への回答が曖昧または遅い場合は警戒
- 提供される情報の透明性を確認
このチェックリストを活用することで、投資詐欺のリスクを大幅に減らすことができます。
投資を検討する際は、これらの項目を慎重に確認し、少しでも疑問や不安がある場合は投資を控えるか、さらに詳しい調査を行うことが重要です。
ビジネスeye
投資詐欺の被害を防ぐために、専門家の意見も聞いてみました。
1. 投資アドバイザーへの相談
資格を持ち、経験豊富な投資アドバイザーに相談することが重要です。専門家は投資商品の妥当性や潜在的なリスクを評価する能力を持っています。
2. 複数の専門家の意見を聞く
一人のアドバイザーだけでなく、複数の専門家の意見を聞くことで、より balanced な判断ができます。これにより、一方的な見方に偏ることを防ぐことができます。
3. 法律の専門家への相談
投資契約書の確認を弁護士に依頼し、法的なリスクを評価してもらうことが重要です。専門家は契約書の細部まで精査し、潜在的な問題点を指摘できます。
4. 金融規制当局の情報活用
金融庁などの規制当局が提供する情報や警告を確認することを推奨しています。これらの機関は、詐欺的な投資スキームについて定期的に警告を発しています。
5. 独立した監査の重要性
外部の独立した監査機関による監査報告書の存在を確認することが重要です。これにより、投資先の財務状況や運営の透明性を確認できます。
6. 異常に高いリターンへの警戒
専門家は、非現実的に高いリターンを約束する投資話には特に注意を払うよう警告しています。「うますぎる話」には必ず裏があると考えるべきです。
7. 急かされる勧誘への慎重な対応
「今すぐに投資しないとチャンスを逃す」といった急かされる勧誘に対しては、慎重に考えるよう助言しています。十分な時間をかけて検討することが重要です。
これらの専門家の意見を参考にし、慎重に投資判断を行うことで、投資詐欺の被害を防ぐことができます。
常に冷静さを保ち、疑問点があれば躊躇せずに専門家に相談することが重要です。