パソナグループの2024年5月期(第17期)の決算内容について、主要な点を解説していきます。
2024年5月期(第17期)に連結子会社であった株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却したことから、連結決算においては 112,040百万円の関係会社株式売却益を特別利益として計上し、大幅な当期純利益を計上しています。
翌事業年度は、相対的に当期純利益の額は低くなり、減収減益の予想ですが、底堅い損益推移を予想しています。
2024年5月期パソナグループ連結決算の注目ポイント
売上高
第17期の売上高は356,733百万円となり、前期(第16期)の372,579百万円から減少しました。
利益
- 経常利益は7,152百万円で、前期の15,366百万円から大幅に減少しました。
- 親会社株主に帰属する当期純利益は95,891百万円と、前期の6,099百万円から大幅に増加しました。(特別利益の貢献大)
財務状況
資産・負債・純資産
- 総資産は301,090百万円で、前期の275,504百万円から増加しました。
- 純資産は154,661百万円となり、前期の71,624百万円から大幅に増加しました。
- 自己資本比率は49.3%で、前期の19.6%から大きく改善しています。
株主還元
1株当たり指標
- 1株当たり当期純利益は2,447.56円で、前期の155.70円から大幅に増加しました。
- 1株当たり純資産額は3,789.42円となり、前期の1,378.40円から大きく上昇しています。
キャッシュ・フロー
- 営業活動によるキャッシュ・フローは7,397百万円の収入。
- 投資活動によるキャッシュ・フローは94,252百万円の収入で、前期の12,502百万円の支出から大きく改善しました。
- 財務活動によるキャッシュ・フローは12,879百万円の支出。
その他の注目点
- 株式会社ベネフィット・ワン及びその子会社が連結の範囲から除外されました。
この決算内容から、パソナグループは子会社の売却により当期純利益の大幅な増加や自己資本比率の改善など、財務体質が強化されたことが伺えます。
ただ、売上高や経常利益の減少も見られるため、今後の事業展開や収益性の改善が注目されるでしょう。
パソナの個別単体の業績は、営業損失・経常損失となり、子会社売却の特別利益により当期純利益となりました。
パソナグループの地方創生ソリューションセグメントが赤字となっている主な理由は以下の通りです:
収益化までの時間
新規事業や施設は、軌道に乗るまでに一定の期間を要します。その間は収益が低く、赤字となる傾向があります。地方創生プロジェクトは長期的な視点で取り組まれているため、短期的には赤字が続く可能性があります。
外部環境の影響
当期は夏季の猛暑や週末の悪天候による影響を受けたほか、国内では観光地の分散化の影響もあり、来場 者数が期初予想に至らない施設もありました。
また、レストランなどの飲食事業を提供する施設では、原材料の高騰によって原価率が上昇し、処遇改善により人件費も増加しました。
これらの事業環境や足もとの業績動向を踏まえて、今後の事業計画を見直した結果、一部の商業施設等の固定資産について回収可能価額が帳簿価額を下回ったため、当第4四半期連結会計期間において固定資産に係る減損損失を計上いたしました。
戦略的な投資判断
パソナグループは、地方創生を重要な経営戦略の一つとして位置づけています。そのため、短期的な収益性よりも長期的な成長や社会的価値の創出を重視した投資判断を行っている可能性があります。
これらの要因により、地方創生ソリューションセグメントは現在赤字となっていますが、パソナグループは引き続き地方創生への取り組みを強化し、中長期的な収益化を目指していると考えられます。
パソナグループの2025年5月期(2024年6月1日〜2025年5月31日)の連結業績予想は以下の通りです:
主要財務指標
売上高: 330,000百万円 (前期比7.5%減)
営業利益: 5,000百万円 (前期比26.4%減)
経常利益: 5,000百万円 (前期比30.1%減)
親会社株主に帰属する当期純利益: 1,300百万円 (前期比98.6%減)
1株当たり当期純利益: 33.18円
業績予想の特徴
- 全体的に減収減益の予想となっています。
- 特に親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な減少が見込まれています。
- 売上高は前期比7.5%減の330,000百万円を予想しており、事業環境の変化や構造改革の影響が考えられます。
- 利益面では、営業利益、経常利益ともに5,000百万円と、前期比で20-30%程度の減少を見込んでいます。
この業績予想は、パソナグループが現時点で入手可能な情報に基づいて算出したものであり、実際の業績は様々な要因により変動する可能性があります。
パソナグループの事業リスクについて
法的規制に関するリスク
- 労働者派遣法、職業安定法等の法改正や解釈変更により、事業運営に影響を受ける可能性があります。
- コンプライアンス違反が発生した場合、事業停止や許可取り消しなどの処分を受ける可能性があります。
景気変動によるリスク
- 経済情勢や雇用情勢の変化により、顧客企業の人材需要が減少し、業績に影響を与える可能性があります。
競合に関するリスク
- 人材サービス業界の競争激化により、価格競争や優秀な人材の確保が困難になるリスクがあります。
個人情報管理に関するリスク
- 大量の個人情報を扱うため、情報漏洩や不正利用のリスクがあります。
- 情報セキュリティ事故が発生した場合、信用失墜や損害賠償請求のリスクがあります。
自然災害・感染症等のリスク
- 大規模な自然災害や感染症の流行により、事業活動の停止や縮小を余儀なくされるリスクがあります。
海外事業に関するリスク
- 海外展開に伴い、為替変動、政治・経済情勢の変化、文化・商習慣の違いなどのリスクがあります。
技術革新への対応リスク
- AI・IoTなどの技術革新に対応できない場合、競争力低下のリスクがあります。
M&Aや新規事業に関するリスク
- M&Aや新規事業展開において、想定通りの成果が得られないリスクがあります。
これらのリスクに対して、パソナグループは適切なリスク管理体制を構築し、影響の最小化に努めていくとのことです。
しかし、これらのリスクが顕在化した場合、業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
ビジネスeye
パソナグループの2024年5月期(第17期)決算は、子会社の売却益を計上したことで、大幅な当期純利益増加となりました。
この子会社売却によって得た資金を今後の事業拡大に活かせるかは、経営次第と言えます。地方創生の赤字縮小やM&A案件、グループシナジー創出のための出資などに振り分けるようです。
次年度の業績予想は控えめな感じがしていますが、無理に拡大路線を取らない方針で、安定感はありますね。
注目すべきは、連結の業績ではなく、個別の業績で、52億円の営業損失を計上し、87億円の経常損失を出している点です。
子会社売却益で当期純利益にはなっていますが、個別単体の事業は赤字で連結会社の収益で黒字を確保していることになります。
来期はどの程度、個別単体で挽回できるのか注目ですね。
2025年5月期の業績予想は減収減益で、今後の収益拡大の起爆剤が必要な状況と言えます。
M&Aと新規事業育成が功を奏すのか、ここも注目ポイントです。
あと、特筆すべきは、2024年5月期から2028年5月期までの5期にわたって、毎期1株当たり60円の特別配当を実施する点です。
通常の配当金にプラスされますので、次期の配当については、2024年5月期と同額となる普通配当15円に加えて、特別配 当60円を合わせた1株当たり75円を予定となっています。