パソナグループの2025年5月期(第18期)第一四半期の決算内容は、営業赤字、大幅当期純損失となりました。そのポイントと業績回復に何が必要なのか、また最悪の場合パソナの倒産はあるのか、検証してみました。
パソナグループの2025年5月期第一四半期は営業赤字 当期純損失
パソナグループの2025年5月期第1四半期(2024年6月1日〜2024年8月31日)の連結業績について、主なポイントをまとめてみました。
業績概要
- 売上高: 76,323百万円(前年同期比15.1%減)
- 営業損失: 436百万円(前年同期は2,228百万円の利益)
- 経常損失: 479百万円(前年同期は2,197百万円の利益)
- 親会社株主に帰属する四半期純損失: 1,194百万円(前年同期は187百万円の利益)
減収減益の主な要因
- 前期末に株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却し、アウトソーシングセグメントを除外
- BPOソリューションの既存大型受託案件がピークアウト
- エキスパートソリューション(人材派遣)の稼働者数減少
セグメント別状況
HRソリューション
- 売上高: 70,769百万円(前年同期比6.3%減)
- 営業利益: 3,453百万円(前年同期比15.9%減)
グローバルソリューション
- 売上高: 2,787百万円(前年同期比9.5%増)
- 営業利益: 73百万円(前年同期比48.4%増)
地方創生・観光ソリューション
- 売上高: 1,716百万円(前年同期比6.7%増)
- 営業損失: 408百万円(前年同期は677百万円の損失)
財政状態
- 総資産: 288,748百万円(前期末比4.1%減)
- 純資産: 150,321百万円(前期末比2.8%減)
- 自己資本比率: 50.0%(前期末49.3%)
業績は概ね計画通りに推移しており、通期の業績予想は変更なしとしています。
2025年5月期の連結業績予想
2025年5月期の連結業績予想については、以下のように見込まれています。
通期業績予想
- 売上高: 330,000百万円 (前期比7.5%減)
- 営業利益: 5,000百万円 (前期比26.4%減)
- 経常利益: 5,000百万円 (前期比30.1%減)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 1,300百万円 (前期比98.6%減)
- 1株当たり当期純利益: 33.18円
主なポイント
前期末に株式会社ベネフィット・ワンの株式を売却し、アウトソーシングセグメントを除外したことが減収減益の主な要因となっています。
第1四半期の業績は概ね計画通りに推移しており、2024年7月12日に公表した業績予想から変更はありません。
既存事業の成長及び収益改善と、新たな社会課題を解決する新産業の創造により、持続的な成長を目指しています。
BPOソリューションやエキスパートソリューションなどの主力事業は、下期以降の回復を見込んでいます。
地方創生・観光ソリューション事業は、インバウンド需要の回復などにより、業績の改善が期待されています。
以上のように、アウトソーシングセグメント除外の影響はあるものの、既存事業の回復と新規事業の育成により、通期では減収減益ながらも一定の利益水準を確保する見通しとなっています。
パソナグループの2025年5月期第1四半期の業績悪化の主な要因
1. アウトソーシングセグメントの除外
ベネフィット・ワンの株式売却により、アウトソーシングセグメントが連結から除外されました。これが売上高と利益の大幅な減少につながりました。
2. 売上総利益率の低下
売上総利益率が前年同期から2.1ポイント減少し、21.5%となりました。
3. 販管費の増加
人件費やIT関連費用の増加により、販管費が増加しました。
4. BPOソリューションとエキスパートソリューションの減収
- BPOソリューションの売上高が前年同期比9.1%減少
- エキスパートソリューションの売上高が前年同期比3.9%減少
5. 営業日数の減少
エキスパートソリューション事業において、営業日数が前年同期から1日少なかったことも影響しています。
6. 投資による費用増:
成長分野での人員強化や先行投資などにより費用が増加しました。
これらの要因が重なり、売上高の減少と利益の悪化につながったと考えられます。特にアウトソーシングセグメントの除外が大きな影響を与えており、それを除いても既存事業の減収や費用増加が業績悪化の原因となっています。
ビジネスeye
パソナの業績改善には以下のような取り組みが必要だと考えられます。
事業構造の最適化とコア事業の強化
人材派遣・人材紹介などの既存の主力事業をさらに強化し、収益基盤を固める必要があります。
特に高付加価値人材の紹介に注力することで、利益率の向上が期待できます。
新規事業の育成
BPOやRPAなどのデジタル技術を活用した新しいサービスの開発・展開を進め、将来の成長の柱を作ることが重要です。
生産性の向上と業務プロセスの改善
自社内の業務を可視化し、無駄な作業を排除するとともに、デジタル化を推進して効率化を図ることが求められます。
人材の最適配置
従業員の適性を見極め、適材適所の人員配置を行うことで、組織全体の生産性向上につながります。
顧客基盤の拡大とサービス品質の向上
顧客満足度を高めることで、リピート率の向上や新規顧客の獲得につなげることができます。
営業力の強化
営業担当者のスキルアップや、デジタルマーケティングの活用により、新規顧客の開拓を積極的に行う必要があります。
コスト管理の徹底
不要な経費の削減や、業務のアウトソーシングの活用などにより、コスト構造を最適化することが重要です。
これらの取り組みを総合的に推進することで、パソナの業績改善につながると考えられます。
特に、デジタル技術の活用や高付加価値サービスの展開に注力することが、今後の成長のカギとなるでしょう。
パソナ倒産の可能性
パソナグループの倒産確率を正確に数値化することは困難ですが、現状の財務状況や事業環境を考慮すると、短期的な倒産のリスクは低いと考えられます。
その理由として下記にまとめてみました。
財務状況 自己資本比率の改善
2024年5月期の決算では、子会社(株式会社ベネフィット・ワン)の株式売却により、大幅な特別利益を計上しました。これにより自己資本比率が改善され、財務体質が強化されています。
安定した収益基盤
パソナグループは公共分野のアウトソーシング事業など、景気変動の影響を受けにくい安定した収益源を持っています。これにより、短期的な業績変動に対する耐性があります。
事業構造と戦略 多角化された事業ポートフォリオ
人材派遣、人材紹介、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)など、幅広いサービスラインナップを持っています。これにより、特定の事業分野のリスクを分散しています。
新規事業への取り組み
BPOサービスの強化や新規事業の開拓に努めており、将来の成長に向けた投資を行っています。
課題と対策
業績の変動
2024年5月期は子会社売却の特別利益により黒字化しましたが、個別業績では営業損失や経常損失を計上しています。
この点は今後の課題となりますが、グループ全体での事業再編や効率化を進めることで対応しようとしています。
人材不足と人件費高騰
人材派遣業界全体が直面している課題ですが、パソナグループは高報酬のエンジニアへの注力や、BPO業務の強化などで対応を図っています。
以上の要因から、パソナグループの短期的な倒産リスクは低いと考えられます。
ただし、中長期的には業界環境の変化や新規事業の成否など、様々な要因が影響するため、継続的な経営努力と戦略の適切な実行が重要となります。