パソナグループ 2025年5月期 第3四半期決算サマリー

(Ⓒパソナグループ)

決算発表日:2025年4月14日
対象期間:2024年6月1日~2025年2月28日

1. 連結業績の概要

  • 売上高:2,289億円(前年同期比▲13.8%)
  • 営業利益:▲12.8億円(前年同期は46.7億円の黒字)
  • 経常利益:▲8.4億円(前年同期は46.2億円の黒字)
  • 親会社株主に帰属する四半期純利益:▲61.6億円(前年同期は▲7.5億円)

売上・利益ともに大幅な減収減益となりました。

主因はアウトソーシングセグメントの廃止と、BPOソリューションでの大型受託案件のピークアウトによる減収、粗利率の低下です。

また、2025年大阪・関西万博のパビリオン出展に伴う臨時費用(特別損失)が発生し、最終損益を大きく押し下げました。

2. セグメント別業績

セグメント売上高(億円)前年同期比営業利益(億円)前年同期比
HRソリューション2,127▲4.6%108.5+2.6%
BPOソリューション(委託・請負)1,014.9▲8.1%70.5▲7.1%
エキスパートソリューション(人材派遣)1,004▲2.2%--
キャリアソリューション(紹介等)107.8+8.8%37.9+27.4%
グローバルソリューション(海外)82.2+3.9%1.9+63.3%
ライフソリューション(子育て・介護等)62.9+10.7%0.7▲23.0%
地方創生・観光ソリューション49.6+7.8%▲14.7赤字幅縮小
  • BPOソリューション:大型案件の減少で減収、DX支援やメンタルヘルスケアなど新領域拡大。
  • エキスパートソリューション:人材派遣は需要堅調、営業日数減やコロナ特需剥落で減収。
  • キャリアソリューション:人材紹介・再就職支援ともに好調で増収増益。
  • グローバルソリューション:アジア・北米で増収、販管費増も営業利益は大幅増。
  • ライフソリューション:子育て支援・介護で増収も費用増で利益は減。
  • 地方創生・観光:インバウンド増や新施策で増収、赤字幅縮小。

3. 財政状態

  • 総資産:2,783億円(前期末比▲7.6%)
  • 純資産:1,448億円(前期末比▲6.4%)
  • 自己資本比率:49.8%(前期末49.3%)

資産減少の主因は現金及び預金の減少(受託案件の預り金減少、借入金返済など)。純資産の減少は主に赤字計上と配当金支払いによるものです。

4. 配当・業績予想

  • 配当予想:期末75円(中間配当なし、前年同様)
  • 通期業績予想(据置)
    • 売上高:3,200億円(▲10.3%)
    • 営業利益:17億円(▲75.0%)
    • 経常利益:20億円(▲72.0%)
    • 親会社株主に帰属する当期純利益:▲43億円

5. 特記事項・今後の見通し

  • 万博出展費用:2025年大阪・関西万博「PASONA NATUREVERSE」パビリオン出展に伴う臨時費用(約28.8億円)を特別損失に計上。
  • アウトソーシング事業の廃止:ベネフィット・ワン株式売却により当該セグメントを廃止、前年同期との比較時は除外ベースも記載。
  • 今後の見通し:BPOはピークアウト影響続くが粗利率改善、エキスパートは派遣稼働者数増見込み。キャリアソリューションや地方創生も堅調。万博関連の観光需要も取り込む計画。

6. 従業員数

  • 連結従業員数:8,735名(臨時含む14,132名、前年同期比1,266名減)
  • 減少主因はベネフィット・ワン連結除外。

第三四半期決算まとめ

パソナグループは2025年5月期第3四半期において大幅な減収減益・最終赤字となりました。

主な要因はアウトソーシング事業の廃止とBPO大型案件の減少、万博関連の一時費用です。

一方で、人材紹介・再就職支援やグローバル事業、地方創生・観光など成長領域は堅調であり、今後もこれらを軸に収益改善を目指す方針です。

パソナの通期見通し達成の可能性

通期業績予想の現状

パソナグループは2025年5月期の通期業績予想(売上高3,200億円、営業利益17億円、経常利益20億円、純損失43億円)を据え置いています。

第3四半期(2月末時点)までの累計実績は、売上高2,289億円、営業損失12.8億円、経常損失8.4億円、純損失61.6億円と、赤字が拡大している状況です。

達成に向けたハードル

  • 第4四半期での大幅な黒字転換が必要
    通期予想を達成するには、残り第4四半期(3~5月)で経常利益約28億円、純損失を18億円程度縮小する必要があります4。これは、前年同期比で経常利益が12.3%増となる水準です。
  • 主力事業の動向
    • BPOソリューション:大型案件のピークアウトや新規受注の遅れにより、売上・利益ともに期初想定を下回って推移しています。
    • エキスパートソリューション(人材派遣):コロナ特需の剥落や営業日数減が響き、減収減益が続いています。
    • キャリアソリューション(人材紹介・再就職支援):増収増益で堅調ですが、全体をカバーするには規模が小さい。
    • 地方創生・観光ソリューション:インバウンド増などで赤字幅縮小傾向も、依然として赤字。
  • コスト構造
    万博関連の特別損失など一時費用は第3四半期までに計上済みですが、成長領域への先行投資や販管費の増加も利益圧迫要因です。

会社側の見解と今後の見通し

会社側は「BPOソリューションは粗利率の改善が進んでいる」「人材派遣は受注堅調」「キャリアソリューションは需要堅調」「地方創生・観光は万博効果で観光客増を見込む」とし、通期予想を据え置いています。

しかし、BPOと派遣の主力2事業での回復が想定通り進まなければ、予想達成は厳しい状況です。

市場・外部評価

  • 直近3カ月(第3四半期単体)は10.3億円の経常赤字であり、ここから急速な業績回復が必要な点を市場も指摘しています。
  • 2025年5月期の業績予想はすでに大幅な下方修正を経ており、会社側も「様々な要因で実際の業績は大きく異なる可能性がある」としています。

結論

パソナグループの2025年5月期通期見通し(売上高3,200億円、経常利益20億円、純損失43億円)の達成は、現時点ではかなり高いハードルとなっています。

第4四半期での大幅な黒字転換が必須であり、主力事業の急回復や万博効果の顕在化が前提となります。

現状の進捗や事業環境を踏まえると、会社計画の達成には不透明感が強い状況です。

パソナの事業は将来成長するのか

成長戦略の全体像

パソナグループは、今後の成長に向けて以下の重点戦略を掲げています。

  • X-TECH BPO(デジタル×BPO)の進化と専門領域の拡大
  • 地方創生事業の収益改善
  • 新規事業の創造(サステナビリティ・健康経営・女性活躍・シニア活用など)

これらの戦略は、国内の生産年齢人口減少や多様化する経営課題、企業の生産性向上ニーズ、社会課題への対応など、構造的な市場変化を背景にしています。

各事業分野の成長可能性

BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業

  • RPAやAI、クラウドなどのデジタル技術を活用した「X-TECH BPO」へのシフトを加速。
  • 企業の人手不足や業務効率化ニーズを背景に、BPOサービス市場自体は今後も拡大が見込まれる。
  • サステナビリティや健康経営支援、メンタルヘルス、ハラスメント対策など新領域BPOも強化中。

人材派遣・人材紹介・再就職支援

  • 派遣は景気や需給の影響を受けやすいが、DX人材や専門職派遣など高付加価値領域への注力で差別化。
  • ハイキャリア領域や女性管理職、シニア人材の紹介・マッチングサービスは拡大傾向。
  • リスキリングやキャリア自律支援など、人的資本経営の流れに沿ったサービスも拡充。

地方創生・観光事業

  • 淡路島を中心に観光・体験型施設、レストラン、宿泊などを展開。コロナ収束とインバウンド回復で利用者増加。
  • 万博など大型イベントを契機に関西エリアでの需要拡大を狙う。
  • 地域特産品やオリジナル商品の開発、多言語対応などで新たな収益源を模索。

サステナビリティ・DX

  • GX(グリーントランスフォーメーション)、SX(サステナビリティトランスフォーメーション)領域でのBPOや人材育成支援を強化。
  • 基幹システム刷新やDX投資により、業務効率化と利益率向上を目指す。

成長のリスクと課題

  • 2025年5月期は大型BPO案件の終了、アウトソーシング事業の売却、万博関連費用などで減収・赤字見通しとなっており、短期的には厳しい状況。
  • ただし、基幹システム刷新や新領域BPOへの投資など、将来成長への布石を打っている。
  • 国内の人材需給や景気変動、投資回収のタイミング、競合他社との競争など不確実要素も多い。
まとめ

パソナグループは、BPOの高度化・専門化、地方創生やサステナビリティ分野への進出、DX推進など、社会課題と企業ニーズの変化に即した事業展開を進めており、中長期的には成長が期待できる戦略を描いています。

短期的には業績が厳しい局面ですが、構造的な市場ニーズや新規事業領域の拡大が進めば、将来的な成長の可能性は十分にあるといえます。

パソナのX-TECH BPOの具体的な進化点

X-TECH BPOは、パソナグループが従来のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)に最先端のデジタル技術や専門性を掛け合わせ、付加価値の高いサービスへと進化させる戦略です。具体的な進化点は以下の通りです。

1. デジタル技術の積極活用

  • RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI、アバター等の導入
    業務自動化や効率化のため、RPAやAI、アバターといったデジタルツールをBPOサービスに組み込み、従来の人手中心からテクノロジー活用型へ転換しています。
  • クラウド、ローコード、ERP、デジタルツイン等の多様な技術導入
    AWS/Azure/GCPなどのクラウド、Power Platformやkintoneなどローコード開発、ERP、デジタルツインなど幅広い技術を活用し、顧客ごとに最適なソリューションを提供しています。

2. BPOサービス領域の高度化・多様化

  • 従来型(事務・給与計算・受付等)から新領域BPOへ
    労働集約型の業務だけでなく、健康経営支援、メンタルヘルスケア、女性活躍推進、リスキリング支援、ハラスメント対策など、時代の課題に即したBPOサービスを開発・拡大しています。
  • プロジェクト型BPOの拡大
    期間限定・プロジェクト型の業務受託が増加しており、企業の変化対応力向上を支援しています。

3. DX人材の育成と提供

  • DX人材の社内外育成
    社員やスタッフ向けにDX研修やローコードツール活用研修を実施し、2024年5月末までに約10,000名のDX人材を育成。これにより、顧客企業へのDX推進支援や業務効率化を実現しています。
  • 顧客向けDXプログラムの提供
    社内で培ったノウハウをもとに、顧客企業向けのDX人材育成プログラムも展開しています。

4. メタバース・アバター活用の新サービス

  • アバターによる遠隔接客・BPO
    「淡路アバターセンター」を開設し、アバターを活用した遠隔接客や販売業務のBPOサービスを展開。メタバース上での職業体験や地方創生にもつなげる取り組みを進めています。

パソナのX-TECH BPOは、「デジタル×人」の融合による業務効率化・自動化、BPO領域の専門化・多様化、DX人材の育成と提供、アバターやメタバース活用など、従来の枠を超えた進化を遂げています。

これにより、企業の生産性向上や社会課題解決に貢献する新しいBPOモデルを構築しています。

(当記事は投資を促すものではありません、投資は自己責任でお願いします。)

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