AIの普及などにより、大量のデータ処理が必要となってきています。海外に置かれているサーバーを利用する企業も多いですが、日本にGPUサーバーを設置してデータ利用量の増加に対応しようと官民一体で取り組んでいます。

膨大な熱量が出るサーバーですが、国内で水冷サーバーを設置している越後湯沢のデータセンターについてご紹介してみたいと思います。

新潟県湯沢町で20 日(木)、コンテナ型データセンター「湯沢GXデータセンター」の運転開始記念式典が開催され、新たに稼働を開始する液冷GPUサーバー、液冷クーリングタワーなどがお披露目されました。

湯沢GXデータセンター

この「湯沢GXデータセンター」は、コンテナ型データセンター事業を手掛ける株式会社ゲットワークス(本社:埼玉県さいたま市、代表取締役:中澤秀則氏)と、株式会社GXテクノロジー(本社:新潟県湯沢町、代表取締役:瀧澤泰三氏)が、新潟県湯沢町にて共同で運営していくコンテナ型データセンターのことです。

その誕生の背景には、次々と次世代GPUが発表され、AI技術の劇的な進化が期待される世のニーズがある一方で、これに対応するサーバーを稼働させて最大限に性能を引き出すための国内データセンター環境の整備は大きく後れをとっている切実な事情があります。

とりわけ水冷サーバーの稼働環境構築は、環境面、そしてコスト面を含め困難を極めている状況です。

すなわち、現在発表されている次世代GPUおよびその搭載サーバーを、既存の空冷環境で稼働することは、処理しなければならない熱量や冷却に必要とする電力量などの課題が山積で、実質的には液冷対応が必要となっている実情を鑑みると、国内IT基盤の拡充は、サーバー稼働環境であるデータセンターの対応にかかっている現実があります。

国内屈指の水冷GPUサーバーが稼働

これらを受け株式会社ゲットワークスは、今回世界初導入となったSupermicro製液冷クーリングタワーに加え、同Supermicro製の液冷GPUサーバーやCDU(Coolant Distribution Unit)を搭載したサーバラック、シュナイダーエレクトリック製水冷式局所冷却空調機などを組み合わせ、これらの液冷ソリューションと同社が長年培った独自の水冷ノウハウを融合させることで、国内屈指の水冷GPUサーバー稼働環境の実現を「湯沢GXデータセンター」で目指しています。

現地では施設の見学会も行われ、解説を担当したゲットワークス社の林竜太朗氏によると、「データセンターではサーバーの故障につながるので危惧される部分ではありますが、このコンテナ型という拡張性の高い形式は水を容易に引き込むことが出来ます」と説明。

液冷GPUサーバーラックに冷却水

液冷GPUサーバーとCDU(Coolant Distribution Unit)を搭載したサーバラックが格納されているコンテナ内にはチューブがあり、このCDUによって冷却水がコンテナ内に直接入ってくる仕様になっています。

その水源が、越後湯沢の資源豊かな井戸水。

これが「湯沢GXデータセンター」の特色のひとつとなっています。

湯沢GXデータセンターの特色

林氏はサーバーに水を送る液冷クーリングタワーについて、「これは密閉型で上から散布水を撒いています。実はこの水がかなりの量なんです。

そこで井戸水を活用することで水道代の節約となり、消費電力の削減にもなります」と説明しました。

つまり、井戸水はポンプで上げた量をそのまま使うことができるので、ポンプの電気の分だけで水を冷却することができるという仕組み。

また、液冷クーリングタワーからCDUに、CDUからサーバーに水が回り、冷却に使われて熱くなった水が液冷クーリングタワーに戻って再び冷やされ、またサーバールームに送り出される循環方式もポイントです。

この液冷クーリングタワーは、「最大で1000kwの熱量を奪うことができます」と林氏。前述のサーバーの消費電力と比較するとサーバーが10kwなので、「サーバー100台の熱を奪うことができる、かなりの容量を持っています。

液冷クーリングタワーの水冷能力がすごい

このコンパクトなサイズで熱を奪う能力を持ってるという、かなり能力が高いということになります」と自信をのぞかせました。

ちなみに現地では空冷タイプのサーバーもお披露目されましたが、液冷タイプとは違い風で冷やすため、水に比して熱の伝道率が低く、多くの冷却能力が必要に。

つまり、結果として消費電力が増えるということになり、サーバー自体の電力が上がってきている中で、そのサーバーを冷やすための消費電力も多くかかってしまうということになります。

「冷却に対して使う消費電力を抑えることが、再生可能エネルギーの活用につながるということになります」と前述の林氏。

「湯沢GXデータセンター」では、同社が培ってきた冷却ノウハウを駆使して対応していくとのとこと。

『湯沢GXデータセンター』は再生可能エネルギー利用の集大成

最後に林氏は、「この『湯沢GXデータセンター』は再生可能エネルギーをいかに使うかということで、これまでゲットワークスで研究してきた冷却の方式など、集大成をここに集めたものになっています」と、見学会を締めくくりました。

ちなみに空冷タイプのサーバーは、液冷のそれよりも音が大きく、120dbくらいの音量が出てしまうとか。この点、コンテナは気密性が高く、扉を閉めればほとんど音が聞こえなくなり、騒音に注意しなくてはならないエリアでも問題なく設置できるとのことです。

なお、同施設見学会当日は、株式会社ゲットワークス 代表取締役 中澤秀則氏や株式会社GXテクノロジー 代表取締役 瀧澤泰三氏、湯沢町 町長の 田村 正幸氏によるあいさつやテープカットも実施されました。

今回の前述の導入は、AIによる需要急増に迅速に対応する建屋不要のコンテナ型データセンター導入の急務を受け、GPUの熱発生の課題を解決する液冷システムの各種設備を実装・運用、そして地下水の循環利用や冷涼な気候を活用したデータセンターのGX(グリーン)化の実例を知る絶好の機会となりました。

液冷対応がマストとなるGPUサーバー、液冷環境の導入に悩む企業へのAIインフラの促進に貢献していくというゲットワークス社の今後にも注目です。

ビジネスeye

GPUサーバーは、複数のGPU(Graphics Processing Unit)を搭載し、大量のデータを高速に処理できる特殊なサーバーです。

通常のPCに1つ搭載されているGPUを複数搭載することで、並列処理能力を大幅に向上させています。

GPUサーバーの特徴
  1. 高速な並列処理: GPUは多数のコアを持ち、並列処理能力が高いため、特定のタスクにおいてCPUよりも遥かに高速な計算が可能です。
  2. 大規模データ処理: リソースを気にせずに大規模なデータ処理を行えることが大きな利点です。
  3. 高密度設計: 一般的にGPUサーバーは高密度サーバーとして設計され、設置面積や消費電力を抑えるよう最適化されています。
主な用途

GPUサーバーは以下のような分野で特に活用されています。

  • AI(人工知能)とディープラーニング
  • 機械学習
  • 生成AI
  • LLM(大規模言語モデル)
  • 科学技術計算
  • VR(バーチャルリアリティ)
  • 高度なグラフィックス処理
運用上の注意点

GPUサーバーを効率的に運用するには、以下の点に注意が必要です。

  1. 電源容量: 高い消費電力に対応できる十分な電源容量が必要です。
  2. 空調管理: 高い発熱量に対応するため、適切な空調設備と配置が重要です。
  3. 省エネ対策: 効率的な冷却システムを採用し、運用コストを抑える工夫が必要です。

GPUサーバーは、大規模なデータ処理や高度な計算が必要な現代のコンピューティングニーズに応える強力なツールとして、さまざまな分野で活用されています。

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