かつては安定配当の代名詞といえる電力株の筆頭東京電力ですが、直近の本決算内容について検証してみました。
東京電力ホールディングス株式会社の2024年3月期の決算内容、主要なポイント
業績概要
2024年3月期の連結業績は、以下の通りです。
売上高: 6兆9,183億円 (前年比14.7%減)
経常損益: 4,255億円の利益 (前年は2,853億円の損失)
親会社株主に帰属する当期純損益: 2,678億円の利益 (前年は1,236億円の損失)
売上高は減少したものの、営業損益、経常損益と当期純損益は黒字に転換しました。
財政状態
総資産: 14兆5,954億円 (前年比1兆323億円増)
負債: 11兆574億円 (前年比6,163億円増)
純資産: 3兆5,380億円 (前年比4,160億円増)
自己資本比率: 24.1% (前年比1.3ポイント上昇)
資産・負債・純資産ともに増加し、自己資本比率も改善しています。
キャッシュ・フロー
営業活動によるキャッシュ・フロー: 6,730億円の収入 (前年は756億円の支出)
投資活動によるキャッシュ・フロー: 6,987億円の支出 (前年比79.7%増)
財務活動によるキャッシュ・フロー: 5,414億円の収入 (前年比69.2%増)
営業キャッシュ・フローが大幅に改善した一方、投資活動による支出も増加しています。
業績変動の主な要因
売上高減少: 燃料・市場価格の低下による東京電力パワーグリッド株式会社と東京電力エナジーパートナー株式会社の売上減少による。
経常利益改善: 燃料費等調整制度の期ずれ影響の好転しています。
特別損益: 原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金1,389億円を特別利益に計上、原子力損害賠償費1,511億円と災害特別損失1,109億円を特別損失に計上しています。
今後の見通し
2025年3月期の連結業績予想については、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期が不透明なため、現時点では未定となっています。
東京電力は厳しい経営環境の中で業績回復の兆しを見せていますが、原子力発電所の再稼働問題など、今後も注視すべき課題が残されています。
東京電力の2025年3月期(2024年4月1日〜2025年3月31日)の連結業績予想については、現時点では未定となっています。
2025年3月期(2024年4月1日〜2025年3月31日)の連結業績予想が未定な理由
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期が見通せないため、業績予測が困難な状況にあります。
売上高、営業損益、経常損益、親会社株主に帰属する当期純損益のいずれも未定としています。
東京電力は、今後業績見通しが立てられる状況になった段階で、改めて業績予想を公表する予定としています。
原子力発電所の再稼働問題が東京電力の業績に大きな影響を与える可能性があるため、その動向を注視する必要があります。
現時点では不確定要素が多く、具体的な数値予想の公表は控えている状況です。
柏崎刈羽原子力発電所の再稼働が東京電力の業績に与える影響は非常に大きいと考えられます。
以下にその理由を説明します。
業績予想への影響
東京電力は2025年3月期の連結業績予想を現時点で未定としています。その主な理由として、「柏崎刈羽原子力発電所の再稼働時期を見通せないこと」を挙げています。
このことから、同発電所の再稼働の有無が業績予想を立てる上で極めて重要な要素であることがわかります。
想定される具体的影響
柏崎刈羽原子力発電所が再稼働した場合、以下のような影響が予想されます。
- 発電コストの低減: 原子力発電は燃料費が比較的安価であるため、火力発電に比べて発電コストを抑えられる可能性があります。
- 収益性の改善: 発電コストの低減により、電力販売における利益率が向上する可能性があります。
- 設備稼働率の向上: 停止中の原子力発電所を再稼働させることで、全体の設備稼働率が上がり、固定費の効率的な回収につながる可能性があります。
- 燃料費調整制度の影響軽減: 原子力発電の割合が増えることで、燃料価格変動の影響を受けにくくなる可能性があります。
不確実性の要因
一方で、再稼働には以下のような不確実性も存在します。
- 安全対策費用の増加
- 再稼働に向けた規制対応コスト
- 地元同意取得のプロセス
- 再稼働後の稼働率や運転期間の見通し
これらの要因により、再稼働の時期や実現可能性、そして再稼働後の実際の業績への影響には不確実性が伴います。
東京電力は、これらの不確定要素が大きいため具体的な数値予想を控えていますが、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働は同社の業績に重大な影響を与える可能性が高いと言えます。
福島原発の廃炉作業の進捗と今後の業績に与える影響
東京電力の決算資料には、廃炉の具体的な進捗状況に関する詳細な情報は含まれていません。しかし、廃炉に関連する以下の情報が記載されています。
- 特別損失として、災害特別損失1,109億円を計上しています。これには福島第一原子力発電所の廃炉関連費用が含まれている可能性があります。
- 特別利益として、原子力損害賠償・廃炉等支援機構からの資金交付金1,389億円を計上しています。この資金の一部は廃炉作業に充てられると考えられます。
- 特別損失として、原子力損害賠償費1,511億円を計上しています。これは福島第一原発事故に関連する賠償費用ですが、間接的に廃炉作業の必要性を示しています。
これらの数字から、東京電力が引き続き福島第一原発の廃炉作業に多額の資金を投じていることがわかります。
しかし、具体的な作業の進捗状況や達成された目標などの詳細情報は、決算短信には含まれていません。
廃炉作業の具体的な進捗状況を知るためには、東京電力が別途公表している廃炉に関する報告書や、原子力規制委員会などの外部機関による評価を確認する必要があります。
ビジネスeye
かつては安定企業の代名詞の東京電力ですが、原子力発電所の再稼働や廃炉作業の進捗が業績にかなり影響を与えているのがわかりますね。
配当金が戻る日はいつになるのか、という感じの状況です。株価については、600円台前後で推移していますが、今後の業績の推移により、乱高下されるのが予想されますので、投資する場合は注意が必要かと思います。
(当記事では投資をすすめるものではありません。全て自己責任でお願いします。)