パソナグループは14日、創業者の南部靖之グループ代表兼社長CEO(最高経営責任者)が5月31日付で取締役を辞任すると発表。

創業から50年目の節目を迎え、新体制の下で新しいグループ経営を担っていくことになる。2025年8月22日の株主総会と取締役会を経て、若本博隆副社長が会長に、中尾慎太郎常務執行役員(パソナ社長)が社長に就任する予定。

直近のパソナグループの経営状況としては、赤字転落が続き、黒字化が見えてみないだけに、新経営陣に期待したいところですね。

パソナグループの経営状況(2024年~2025年)

直近の業績動向

  • 2024年5月期の連結売上高は3,567億円(前年比約4%減)、営業利益は68億円(前年比約53%減)、経常利益は71億円(前年比約53%減)、純利益は958億円(特別利益による大幅増)となりました。
  • 2025年5月期は売上高3,300億円(前年比7.5%減)を見込んでいますが、これは子会社ベネフィット・ワン株式売却の影響を除くと3.7%の増収計画です。
  • 2024年6~8月期(第1四半期)は最終損益が11億円の赤字(前年同期は1.87億円の黒字)となり、6年ぶりの最終赤字に転落しました。
  • 2024年9~11月期(第2四半期)も25.6億円の赤字で、赤字幅が拡大しています。

利益・収益性の推移

  • 2023年5月期は売上高3,725億円(前年比1.8%増)、営業利益143億円(同34.9%減)、経常利益153億円(同31.7%減)、純利益60億円(同29.3%減)と、増収減益でした。
  • 主力の人材派遣や人材紹介事業は減収傾向ですが、BPO(業務委託)サービスは堅調に推移しています。
  • 2024年5月期は特別利益(ベネフィット・ワン株式売却益)で純利益が大幅増となりましたが、本業の利益率は低下しています。

財務・キャッシュフロー

  • 自己資本比率は2024年5月期で49.3%と大幅に改善(前年19.6%)。
  • 営業キャッシュフローは739億円、現金期末残高は1,370億円と潤沢です。
  • ROE(自己資本利益率)は2024年5月期で94.7%と非常に高いですが、これは一時的な特別利益の影響が大きいです。

今後の見通し・課題

  • 国内の人材需要は安定しているものの、コロナ禍での一時的な需要減少やコスト増(有給休暇取得・社会保険料負担増)で粗利率が低下しています。
  • BPOサービスや地方創生事業、観光需要の回復など新規分野での成長を見込んでいます。
  • 2025年5月期はベネフィット・ワン株式売却の影響で減収見通しですが、実質的には増収を計画しています。

株価・バリュエーション

  • 2025年4月時点の株価は2,786円、PER(調整後)は0.88倍、PBRは0.60倍と割安感が出ています。
  • 配当利回りは3.48%と高水準です。

パソナグループの赤字傾向

パソナグループは2024年に特別利益で純利益が大幅増となったものの、本業の利益率は低下し、2024年度下期以降は赤字転落が続いています。

人材派遣・紹介事業の減収やコスト増が課題ですが、BPOや地方創生など新規分野での成長を目指しています。財務基盤は強化されており、今後の収益回復と新規事業の拡大が注目されます。

パソナグループ赤字化の主な原因

1. 地方創生事業の収益化遅延と減損損失

  • 地方創生ソリューションセグメント(淡路島のテーマパークやレストラン等)は、新規事業や施設が軌道に乗るまで時間がかかり、短期的には収益が低く赤字が続いています。
  • 夏季の猛暑や悪天候、観光地の分散化など外部環境の影響で来場者数が予想を下回り、飲食事業では原材料高騰や人件費増加も収益を圧迫しました。
  • これらの事業の一部で固定資産の回収可能価額が帳簿価額を下回り、減損損失を計上したことも赤字要因です。

2. 人材派遣事業の採算悪化

  • コロナ禍での医療関連受託業務の特需が終了し、その反動で人材派遣事業の売上・採算が大きく低下しました。
  • 人材不足による人件費高騰、円安や物価上昇によるコスト増加が重なり、価格転嫁が進まず収益性が悪化しています。

3. 特別損失の計上

  • 万博関連費用や淡路島の一部設備の建設費・管理費などを特別損失として計上したことも、税前赤字の要因となっています。

4. ベネフィット・ワン依存とグループ再編

  • これまでグループの利益の多くを子会社ベネフィット・ワンが稼いでいましたが、同社株式の売却や非支配株主への利益配分が増えたことで、親会社株主に帰属する利益が大幅に減少しています。

まとめ表

主な要因内容
地方創生事業の赤字・減損損失新規事業の収益化遅延、外部環境悪化、減損損失の計上
人材派遣事業の採算悪化コロナ特需終了、人件費・コスト増、価格転嫁難
特別損失の計上万博・淡路島関連費用の特損
ベネフィット・ワン依存の解消子会社売却・非支配株主利益増で親会社利益減

これら複合的な要因により、パソナグループは2024年度以降、赤字化が続いています。

パソナ社長交代の影響検討

経営体制の刷新と世代交代

  • 創業者・南部靖之氏が2025年5月31日付で社長・取締役を退任し、6月1日付で若本博隆副社長が社長に昇格、さらに8月22日には若本氏が会長に、中尾慎太郎常務執行役員が新社長に就任するという、段階的な世代交代が進められる。
  • 創業50周年という節目での交代は、南部氏自身が「次の50年に向けて新体制に託したい」との意向を示しており、長期的な視点での経営刷新を狙ったもの。

企業戦略・事業運営への影響

  • 南部氏は人材派遣ビジネスの先駆者として、パソナを業界大手に成長させたが、行政サービスのアウトソーシングや大阪万博への関与などで社会的な賛否も大きかった。
  • 新体制では、南部時代の功績(社内ベンチャー制度による新規事業創出や福利厚生事業の拡大など)を継承しつつ、社会的価値の再定義や持続可能な事業運営が求められる。
  • 経営陣の若返りにより、従来の人的ネットワークや経営スタイルからの脱却、新たな成長戦略やガバナンス強化への期待が高まる。

株価・市場の反応

  • 創業者退任は企業イメージや株価に大きな影響を与える可能性があり、投資家や市場は新経営陣の手腕や今後の成長戦略に注目している。

社会的評価と課題

  • 南部氏の退任は、パソナの「創業者依存」からの脱却と、より透明性の高い経営体制への転換と受け止められている。
  • 一方で、派遣ビジネスの拡大による格差拡大や行政との関係性など、社会的な課題も引き継がれるため、新体制には社会的責任の再定義が求められる。

新社長に期待

パソナの社長交代は、創業50周年の節目における世代交代と経営刷新を象徴し、今後の企業戦略や社会的評価、株価動向に大きな影響を与える。

新体制には、南部時代の功績を活かしつつ、持続可能な成長と社会的責任の両立が期待されている。

ビジネスeye

パソナグループの新社長の経営ビジョンはどのようなものになっていくか、考察してみました。

若本博隆の経営スタイルの展望

現時点での公表情報

  • 若本博隆氏は2021年12月からパソナグループの取締役副社長執行役員COO、経営企画本部長兼成長戦略本部長を務めており、経営企画や成長戦略の立案・実行に深く関与してきた実績がある。
  • 2025年6月1日付で社長に昇格し、8月22日には代表権のある会長に就任する予定であり、社長としての任期は短期間となる見込み。
経営スタイルの特徴と予想される方向性
  • 経営企画・成長戦略の責任者としての経験から、データや分析に基づく合理的な意思決定、事業の多角化や新規事業開発への積極的な姿勢が期待される。
  • 南部体制下で進められてきた地方創生や介護分野などの多角化路線を継承しつつ、より効率的かつ持続可能な成長戦略を重視する可能性が高い。
  • 創業者からのバトンを受ける形で、組織の安定と次世代経営陣への円滑な引き継ぎを重視した「橋渡し型」のリーダーシップが中心となる見通し。
まとめ

若本博隆氏の経営スタイルは、経営企画・成長戦略の実務経験を活かした合理的かつ多角的な事業運営、そして次世代へのスムーズなバトンタッチを重視する「安定志向・戦略重視型」となることが予想される。

ただし、社長在任期間が短いため、大胆な路線転換よりも現体制の継承と安定運営が主眼となる見込み。

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