先日発表された日産自動車株式会社の2025年3月期第3四半期決算について、詳細を以下にまとめました。
Hondaとの経営統合破綻を発表して、注目の第三四半期決算発表となりました。
注目は、通期業績予想で、当期純損失の見込みとなったことです。
営業利益、経常利益、当期利益ともに急減していて、当然、通期の予想も損失となるのは当然と言えますが、問題は来期の業績予想です。
このまま業績回復の目途が立たない場合、来期の業績予想が赤字となる可能性がかなり高いです。次の本決算まで目が離せない展開が続くと思います。
また、日産自動車から、後発事象として米国の工場での希望退職者の募集を行うことを発表していて、その規模と必要なコストについては、試算できていないとしている。
日産自動車株式会社2025年3月期 第3四半期決算短信の概要

1. 連結業績(2024年4月1日~2024年12月31日)
売上高: 9兆1,432億円 (対前年同期比0.3%減)
営業利益: 640億円 (対前年同期比86.6%減)
経常利益: 1,594億円 (対前年同期比70.5%減)
親会社株主に帰属する四半期純利益: 51億円 (対前年同期比98.4%減)
包括利益: △611億円
1株当たり四半期純利益: 1.42円
2. 連結財政状態
総資産: 20兆9,482億円
純資産: 6兆2,284億円
自己資本比率: 28.5%
3. 配当の状況
第2四半期末: 0.00円
期末: 未定
4. 2025年3月期の連結業績予想(2024年4月1日~2025年3月31日)
売上高: 12兆5,000億円 (対前期比1.5%減)
営業利益: 1,200億円 (対前期比78.9%減)
親会社株主に帰属する当期純利益: △800億円
1株当たり当期純利益: △22.31円
5. 特記事項
2024年11月に、コスト競争力やブランド力などの課題に対処し、業績を回復させるための計画を公表。
グローバル生産能力を20%削減
グローバル人員数を9千人削減
変動費の削減
会社資産の合理化
設備投資と研究開発費の優先順位を見直し
6. キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フロー: 465億円の収入 (前年同期比4,572億円減)
投資活動によるキャッシュ・フロー: 6,527億円の支出 (前年同期比864億円増)
財務活動によるキャッシュ・フロー: 5,037億円の収入 (前年同期比7,699億円増)
自動車事業のフリーキャッシュフロー: 5,067億円のマイナス
自動車事業のネットキャッシュ: 1兆2,410億円 (前期末から3,050億円減)
7. セグメント情報
自動車事業:
売上高: 8兆2,437億円
セグメント損失: 1,909億円
販売金融事業:
売上高: 8,994億円
セグメント利益: 2,144億円
8. 地域別情報
日本:
売上高: 1兆4,884億円
営業利益: 1,212億円
北米:
売上高: 4兆9,932億円
営業利益: -62億円
欧州:
売上高: 1兆547億円
営業利益: -679億円
アジア:
売上高: 4,990億円
営業利益: 412億円
9. その他
元会長らの不正行為に関する事項に特段の変更はなし。
公正取引委員会からの勧告を重く受け止め、法令遵守体制の強化と再発防止策の徹底に取り組んでいる。
日産自動車の赤字転落危機の原因とは
日産自動車の2025年3月期第3四半期決算短信から読み解いてみますと、赤字転落の原因は以下のようになります。
2025年3月期連結業績予想の修正
日産自動車は、2025年3月期の連結業績予想を下方修正し、最終損益が800億円の赤字となる見込みを発表しました。これは、2024年11月9日に発表された業績予想からの修正です。
つまり、再度、業績予想の下方修正を出したということです。
売上高: 12兆5,000億円(前回予想から変更なし)
営業利益: 1,200億円(前回予想から変更なし)
親会社株主に帰属する当期純利益: △800億円(前回予想は2,700億円の黒字)
1株当たり当期純利益: △22.31円
赤字転落の主な原因
1. 販売台数の減少: グローバル全体需要は増加しているものの、日産自動車グループのグローバル小売台数は前年同期比で減少しています。
2. 販売奨励金の増加: 販売台数を維持・増加させるための販売奨励金が増加し、収益を圧迫しています。
3. インフレーション: 原材料価格の高騰や物流コストの増加など、インフレーションによるコスト増が収益を悪化させています。
4. 為替変動: 為替相場の変動も収益に影響を与えています。
5. 品質関連費用: 品質に関わる費用も発生しており、業績の重荷となっています。
これらの要因が複合的に影響し、日産自動車は2025年3月期の業績予想を下方修正、最終赤字に転落する見込みとなりました。
日産自動車は、コスト競争力やブランド力などの課題に対処し、業績を回復させるための計画を公表しています。
具体的には、グローバル生産能力の削減、グローバル人員数の削減、変動費の削減、会社資産の合理化、設備投資と研究開発費の優先順位の見直しなどに取り組むとしています。
ビジネスeye
日産自動車の赤字転落が他の自動車メーカーに与えた影響についてまとめてみました。
他の自動車メーカーの日産自動車の赤字転落に対する具体的な反応についての情報は、明確には存在しませんが、業界内での一般的な見方や影響について以下のように推測できます。
1. 競合他社の警戒感の高まり:
日産の赤字転落は、自動車業界全体の厳しい経営環境を反映しています。
他のメーカーも同様の課題に直面している可能性が高く、自社の経営戦略の見直しや効率化の必要性を再認識したと考えられます。
2. トヨタ自動車の教訓:
トヨタ自動車は過去に販売台数を追求して赤字に転落した経験があります。
この教訓から、「いいクルマをつくろう」というスローガンに変更し、販売台数の追求よりも品質と収益性を重視する戦略に転換しました。
他のメーカーも同様のアプローチを検討する可能性があります。
3. 技術と市場ニーズのバランス:
日産は「技術の日産」として知られていますが、技術力だけでは市場での成功は保証されません。
他のメーカーは、技術開発と市場ニーズのバランスを取ることの重要性を再認識したと思われます。
4. グローバル戦略の見直し:
日産の新興国市場での過剰投資が指摘されています。
他のメーカーは、グローバル展開戦略を慎重に見直し、各地域の市場特性に合わせたアプローチを強化する可能性があります。
5. 業界再編の可能性:
日産の赤字転落は、自動車業界全体の構造変化を示唆しています。
他のメーカーは、業界再編や協業の可能性を探る動きを加速させる可能性があります。
これらの反応は、自動車業界全体が直面している課題と変革の必要性を反映していると考えられます。