人的資本経営とは、企業の人材を重要な経営資源と捉え、その開発と活用を通じて企業価値の向上を目指す経営手法です。

2023年3月より、金融庁と政府によって、大企業に対して人的資本に関する情報開示が義務化されました。

これは、企業の人的資本の状況を社会に開示し、企業価値の評価に活用してもらうことが目的です。

人的資本情報開示の内容

人的資本の情報開示には以下の7つの分野、19の項目が含まれます:

  • 従業員エンゲージメント
    • 従業員満足度
    • 離職率
    • 育休取得率 など
  • 多様性
    • 女性管理職比率
    • 障がい者雇用率
    • 外国人従業員比率 など
  • 人材育成
    • 研修投資額
    • 1人当たり研修時間
    • 社内資格取得者数 など
  • 健康・安全
    • 休業災害度数率
    • メンタルヘルス休業者数
    • 健康診断受診率 など
  • 労働環境
    • 平均残業時間
    • 年次有給休暇取得率
    • テレワーク実施率 など
  • コンプライアンス
    • 法令違反件数
    • 内部通報件数
    • 情報セキュリティ教育受講率 など
  • 生産性
    • 1人当たり売上高
    • 1人当たり付加価値額
    • 1人当たり経常利益 など

これらの情報開示は、企業の人的資本の状況を可視化し、企業価値の評価に活用されることが期待されています。

人的資本情報開示の意義

人的資本情報の開示には以下のような意義があります:

  • 企業価値の評価向上
    • 人的資本の状況が明らかになることで、企業の真の価値が適切に評価されるようになります。
  • ESG投資の促進
    • 人的資本の情報開示は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを示すことになり、ESG投資家の関心を集めることが期待されます。
  • 人材採用・定着の改善
    • 自社の人的資本の状況を開示することで、優秀な人材の採用や従業員の定着につながることが期待されます。
  • 人的資本経営の推進
    • 情報開示を通じて、企業内部での人的資本経営への意識が高まることが期待されます。

このように、人的資本情報の開示は企業の価値向上や人材マネジメントの改善につながる重要な取り組みといえます。

人的資本経営の実践

人的資本経営を実践するためには、以下のような取り組みが重要です:

  • 人材データの収集・分析
    • 従業員の属性、スキル、パフォーマンスなどのデータを収集・分析し、人材の強みや課題を把握する。
  • 人材育成の強化
    • 従業員一人ひとりの能力開発を支援するための研修制度の充実や、キャリア開発支援などを行う。
  • 多様性の推進
    • 性別、年齢、国籍などの違いを活かせる組織文化を醸成し、多様な人材の活躍を促進する。
  • 働き方改革の実施
    • 長時間労働の削減や柔軟な働き方の導入など、従業員の健康と生産性の向上を図る。
  • 人事評価の見直し
    • 従業員の能力や貢献度を適切に評価し、公平な処遇につなげる仕組みを構築する。

このように、人的資本経営を実践することで、企業の持続的な成長と従業員の幸福の両立が可能になります。

人的資本経営の情報開示によって企業が得られるメリットは以下の5つです。

1. 透明性と信頼性の向上

  • 情報開示により、企業の人的資本経営の実態が透明化され、ステークホルダーに対する信頼性が向上します。

2. 投資家との関係強化

  • 投資家は企業の人的資本経営の状況を評価し、投資判断を行います。情報開示により、投資家との関係が強化され、資金調達の機会が増加します。

3. 従業員のモチベーション向上

  • 従業員は企業が自身の成長や福利厚生に対して真剣に取り組んでいることを知ることで、モチベーションが向上し、生産性が向上します。

4. 競争力の獲得

  • 人的資本経営の情報開示により、企業は優れた人材を引き付けることができ、競争力を獲得します。

5. 社会的責任の履行

  • 企業は社会的責任を果たすために、人的資本経営の情報開示を行うことで、社会的信頼を築きます。

これらのメリットにより、企業は持続可能な成長と社会的価値の向上を実現することができます。

人的資本経営の情報開示は企業価値評価に以下のように活用されます。

1. 長期的な企業価値の評価

  • 人的資本に関する情報開示は、企業の持続可能性や成長性を示すため、投資家による長期的な企業価値評価に活用されます。

2. ESG投資への活用

  • 人的資本に関する情報は、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを示すため、ESG投資家による企業評価に活用されます。

3. 無形資産の評価

  • 人的資本は企業の重要な無形資産の一つであり、その情報開示は企業の無形資産価値の評価に活用されます。

4. 競争力の評価

  • 人的資本に関する情報開示は、企業の人材育成や組織力などの競争力を示すため、企業価値評価に活用されます。

5. リスク管理の評価

  • 人的資本に関する情報開示は、企業のリスク管理体制を示すため、企業価値評価に活用されます。

つまり、人的資本経営の情報開示は、企業の持続可能性、競争力、リスク管理などを示すため、投資家による総合的な企業価値評価に活用されるのです。

人的資本経営の情報開示が成功するポイントは以下の通りです。

1. 戦略的な情報開示

  • 人的資本に関する情報開示は、企業の経営戦略や目標と連携させることが重要です。
  • 単なる数値データの開示ではなく、人的資本がどのように企業価値向上に貢献しているかをストーリーとして示すことが成功のポイントです。

2. 具体的な指標の設定

  • 人的資本に関する指標(KPI)を具体的に設定し、定期的に開示することが重要です。
  • 従業員の満足度、生産性、スキル向上率など、企業の人的資本強化に関連する指標を設定しましょう。

3. ステークホルダーとの対話

  • 投資家や金融機関など、ステークホルダーとの対話を通じて、人的資本経営の重要性を理解してもらうことが成功のポイントです。
  • ステークホルダーのニーズに合わせた情報開示が求められます。

4. 経営陣のコミットメント

  • 経営陣が人的資本経営に強いコミットメントを持ち、情報開示を主導することが重要です。
  • 経営陣のリーダーシップが、情報開示の質と量を高めることにつながります。

5. 情報開示の継続性

  • 人的資本に関する情報開示は継続的に行うことが重要です。
  • 単発的な開示では、ステークホルダーの信頼を得られません。

以上のように、戦略性、具体性、ステークホルダーとの対話、経営陣のコミットメント、継続性が人的資本経営の情報開示を成功に導くポイントです。

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