2026年1月28日、KKCompany Japan合同会社(以下、KKCompany)は、企業の社員教育やナレッジ共有を変革する新サービス「スキルアップ・サプリ」の提供を開始しました。

同日、東京・渋谷サクラステージにある同社オフィスにてメディア向け発表会が開催され、代表のトニー・マツハシ氏およびProduct Sales シニアアカウントエグゼクティブの三木芽以子氏が登壇。マルチメディアとAI技術を融合させた新サービスの全貌と、その背景にある「LXP(学習体験型プラットフォーム)」へのパラダイムシフトについて語られました。

企業のAI活用推進に向けたKKCompanyの取り組み

KKCompanyは、アジア太平洋圏に事業拠点を持つAIマルチメディアテクノロジーグループ、KKCompany Technologiesの日本法人です。音楽配信サービス「auスマートパスプレミアムミュージック」や「KKBOX」の裏側を支える技術提供に加え、動画配信プラットフォーム「TELASA」や「J:COM STREAM」などの大規模配信基盤も手掛けています。

こうした「大量のメディアデータ」と「AI・機械学習」を組み合わせた技術をベースに、一般企業向けにSaaS型プロダクトとして展開しているのが「BlendVision」シリーズです。

今回発表された「スキルアップ・サプリ」は、同社が提供するマルチメディア対応AIプラットフォーム「BlendVision AiM」を基盤として開発されました。マツハシ氏は冒頭、この技術的背景について次のように述べました。

KKCompany Japan合同会社 代表 トニー・マツハシ氏

「我々は音楽や動画といったマルチメディア情報の取り扱い、そしてAIによるパーソナライズやリコメンデーションを長年やってきました。その知見をベースに、企業向けにSaaS型のプロダクトを提供しています。特に、文字情報だけでなく、映像や動画も含めてAIが理解・分析できる『マルチモーダルAI』の開発に非常に力を入れています」(マツハシ氏)

「BlendVision AiM」の進化とは?

新サービスの中核となる技術基盤「BlendVision AiM」は、2024年のリリース以来、進化を続けています。最大の特徴は、動画・音声・テキストといった異なる形式のデータをAIが複合的に分析できる点です。

「従来の議事録作成AIなどは、基本的に音声をテキスト化し、そのテキストを分析していました。しかし我々のマルチモーダルAIは違います。音声だけでなく、映像や動画そのものをAIが分析対象として扱えるのです。人間が動画を見て内容を理解するように、AIも動画を理解できるようにする。これを目指して進化させてきました」(マツハシ氏)

具体的には、動画をアップロードするだけで、AIがバックグラウンドで分析を行い、以下の処理を自動で行います。

●タグの自動生成: 動画内の重要キーワードを抽出

●シーン(チャプター)分割: 話題の変わり目を検知し分割

●タイトル・要約の生成: 各チャプターの内容を要約

これにより、ユーザーは動画全体を見なくとも、必要な情報へピンポイントでアクセス可能になります。また、チャットボット形式でのセマンティック検索やキーワード検索により、膨大なアーカイブの中から欲しい情報を瞬時に見つけ出すことができます。

BlendVisionによるマルチモーダルAI分析の仕組み(音声、映像、意図分析など)

ナレッジ習得・活用 AIプラットフォーム「スキルアップ・サプリ」リリース

この強力なAI基盤を活用し、企業の学習・教育領域に特化させたのが今回発表された「スキルアップ・サプリ」です。

開発の背景には、従来の「LMS(学習管理システム)」から「LXP(学習体験型プラットフォーム)」への潮流の変化があります。LMSが「企業が社員に学んでほしい情報を管理する(管理者が主導)」ものであったのに対し、LXPは「学習者が自ら学ぶべきコンテンツを見つけ、体験する(学習者が主導)」ことを重視します。

「LMSはコンプライアンス研修など『やらなければならないこと』の管理には適していましたが、個人のキャリアや興味に基づいた自律的な学習には限界がありました。一方で、一人ひとりに最適なカリキュラムを手動で作るのは非常に手間がかかります。そこでAIの出番です。AIの進化によって、個人のニーズに適したカリキュラム生成やリコメンドが可能になり、LXPへのシフトが現実的になってきました」(マツハシ氏)

「スキルアップ・サプリ」では、以下の機能によって効率的な学びとナレッジ活用を実現します。

AIによるコンテンツ分析と時短学習

長時間の研修動画もAIがチャプター分割し、タグ付けを行います。ユーザーは気になるタグをクリックするだけで該当シーンへジャンプでき、要約を読むだけでも内容を把握できます。マツハシ氏自身も「分かっている部分は1.75倍速で飛ばし、重要な部分だけじっくり見る」といった使い方で、大幅な時短(タイパ向上)を実感しているといいます。

AI検索(チャットボット)

「KPIの管理方法について知りたい」などと質問すると、AIが動画内の発言から答えを生成し、根拠となる動画の再生位置を提示します。

AI自動テスト生成

管理者が動画の内容に基づいてテスト問題を作成する際、AIが自動で設問案を生成します。

IDP(個別育成プラン)のAI生成

現在の職種や将来の目標を入力すると、AIがギャップ分析を行い、その人に必要な学習カリキュラムを提案します。(※専用UIは2026年3月末実装予定)

従来のLMSと次世代型LXPの違いを比較

デモンストレーションを担当した三木氏は、実際の画面を見せながら次のように解説しました。

「これが実際の動画視聴画面です。画面下には『クリップ』と呼ばれる、AIが話題の移り変わりによって自動分割したチャプターが表示されています。そしてプレイヤーの上には『タグ』が並んでいます。例えば『スマートの法則』というタグが気になったら、そこをクリックするだけ。すると、動画全体の中からその話題を話している部分だけに絞り込まれ、ピンポイントで視聴できます。最初から最後まで通して見る必要はなく、タグを眺めて知らない言葉だけを確認するといった時短学習が可能です」(三木氏)

KKCompany Japan合同会社 Product Sales シニアアカウントエグゼクティブ 三木芽以子氏

ビジネスパーソンの成長を支えるハブ

「スキルアップ・サプリ」のもう一つの大きな特徴は、社外のeラーニングコンテンツだけでなく、社内に眠る「暗黙知」や「独自資料」も統合して扱える点です。

社内には、業務マニュアル、会議の録画データ、OJTの記録、PDF資料など、有益な情報が散在しています。これらを「スキルアップ・サプリ」に取り込むことで、AIが分析・インデックス化し、全社的なナレッジベースとして活用可能にします。

「社内にある様々なファイル、情報、これらも全てAIが取り扱えるようにしたい。特に私が可能性を感じているのは『会議のアーカイブ』です。過去数年にわたる社内会議を全てAIに学習させれば、どういった議論が行われてきたか、成功要因は何かといった示唆をAIが出せるようになるかもしれません。これは今まで誰もやったことがない領域です」(マツハシ氏)

また、標準パッケージとして株式会社Hajimariが提供する動画コンテンツ約1,000本が見放題で提供されます。さらにオプションとして、テレビ朝日の「eduleap(エドゥリープ)」など専門性の高いコンテンツも追加可能です。

これにより、一般的なビジネススキルは標準コンテンツで学び、自社独自の業務知識は社内アップロード動画で学ぶといった、ハイブリッドな学習環境が構築できます。

社内情報と社外コンテンツ(Hajimari、eduleap等)を統合するハブ構想

「スキルアップ・サプリ」の料金プラン

料金プランは、スモールスタートしやすい価格設定となっています。

ミニプラン(月額880円/ID)

標準搭載のeラーニング動画(約1,000本)が見放題。自社コンテンツのアップロードは不可。研修目的での利用に最適。

ライトプラン(月額1,580円/ID)

ミニプランに加え、自社コンテンツ(動画・資料)のアップロードが可能(年間120時間分)。社内ナレッジの共有・検索活用が可能に。

ベーシックプラン(月額2,180円/ID)

自社コンテンツ容量が増加(年間240時間分)。

プラスプラン(月額3,380円/ID)

さらに大容量の活用向け(年間480時間分)。

※価格は税抜、1ユーザーあたりの月額。10ユーザーから契約可能。

「学習管理」から「学習体験」へ。KKCompanyが提示した「LXP」という概念は、AI技術の進化によってようやく実用段階に入ったと言えます。

単に動画を見るだけのeラーニングではなく、AIが「この動画のここを見るといいよ」とガイドし、分からないことはAIに質問し、さらに社内の会議動画さえも教材に変えてしまう。「スキルアップ・サプリ」は、人手不足やスキル継承に悩む多くの企業にとって、人材育成のDXを加速させる強力なツールとなりそうです。

マツハシ氏は最後に、「時短・タイパもそうですし、企業の中にある幅広い情報・知見をAIアシストでフル活用していただきたい」と締めくくりました。

社員が自ら学び、成長する文化をどう作るか。その答えの一つが、この新しいプラットフォームにあるかもしれません。

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