
不動産売買、賃貸管理、⼟地開発、ホテル事業など、さまざまな事業を展開する東通グループは、新たに始動するプロジェクト「不動産をもっと⾃由に⼤作戦」を発表しました。
2025年6⽉2⽇(⽉) には、TOKYO NODE HALLにて「東通グループ事業戦略発表会」が行われ、プロジェクトの概要や将来の展望が示されました。
第二創業期は「新しい価値を見出すプロデュース力」に注力
冒頭では、東通グループ 代表取締役 共同代表者 桜⽊ 翔氏が登壇。

設立から6年目を迎えた東通グループは、総合不動産会社としてさまざまな取り組みを展開してきました。今後はさらなる革新的な成長を加速していくために、「新しい価値を見出すプロデュース力に注力していく」と桜⽊氏は述べました。
「当社はお客様のニーズに応え、多様なサービスを提供することで、不動産マーケットの中で存在感を高めてきました。 第二創業期を迎える今、プロップテックやAI分析など、マーケットの中で見過ごされがちなチャンスを見出して、そこに新しい価値を創造していくことを目指していきます。そして2030年までに、運用資産を現状の3倍である3,000億の達成を⽬標に掲げています」(桜⽊氏)
同じく共同代表を務めるHUGO CHIANG(ヒューゴ・チャン)氏は、東通グループを立ち上げたエピソードを紹介しました。
2020年、コロナ禍の真っ只中に会社を設立したこともあり、桜⽊氏とヒューゴ氏は3回しか直接顔を合わせていないそうです。オフィスにも行くことができなかったそうですが、2022年にHUGO氏が東京チームと対面で顔を合わせた際、“ある不安”が心によぎったそうです。

「当初は、念願かなって東京チームのメンバーに会えることに期待と熱意に満ちあふれていましたが、私がいなくても会社が回っているのと、東通がなくても日本は十分に素晴らしい国だと感じたのです。
『果たして自分には、どんな価値があるのだろうか』。そう自問自答を繰り返していくうちに、『東通ならではの価値や存在意義がある』と考えるようになり、この発想の転換こそが、東通の揺るぎないモチベーションや挑戦し続ける姿勢につながっています」(HUGO氏)
不動産業界をダイナミックに変革していく5つのプロジェクト

次いで、東通グループ執行役員の桜井 吉男氏が登壇し、具体的な戦略や今後のプロジェクトを説明しました。
同氏はIT業界出身で、今まで培ってきた経験やノウハウを生かし、旧態依然とした伝統産業の不動産業界をダイナミックに変えていくために東通グループへ参画。
「10年後に選ばれる企業になるためには、変革がとても重要になる」
このように語る桜井氏は、東通グループの新たなプロジェクト「不動産をもっと⾃由に⼤作戦」の詳細を発表しました。
このプロジェクトには、全部で5つの作戦があります。
まず1つ目は「資産運⽤を⾃由に! ⼤作戦」で、不動産金融を通して投資家の資産を増やしていくアセットマネジメントの事業になります。
「今回は、海外投資家との強固なネットワークを持つ当社と、グローバル不動産投資における豊富な実績と高い専門性を誇るアジリティアセットアドバイザーズ社との合弁で『東通アセットマネジメント株式会社』を設立しました。桜木からも紹介があったように、この事業は運用資産を3000億円まで拡大する重要なファクターになると考えております」(桜井氏)
2つ目は「不動産投資を⾃由に! ⼤作戦」。投資家から出資を募り、売買・賃貸などの運用を行い、その収益を投資家に分配していく⼩⼝化商品事業になります。不動産投資で資産形成していない初心者の入口にもなる事業で、将来的にはAIの活用も視野に入れているとのこと。

3つ目は「宿泊体験を⾃由に! ⼤作戦」です。香港、マカオでの実績をもとに、日本では新橋に「LOFホテル」を運営しています。桜井氏は「既存のビジネスホテルを展開していくのではなく、立地や周りの環境に応じてコンセプトを柔軟に設計する新たなホテルをオープンさせる」と語りました。
具体的に現在取りかかっているのは芝浦になります。空港や都心へのアクセスが抜群のエリアで、町の空気や人との感性を保護する「共鳴型ホテル」という選択肢を提示し、ビジネス用途やファミリー利用など、多様なニーズに応えられるホテルを見据えているそうです。また、ホテルは全体的に木のサロンをイメージしており、静けさや温かみを感じる仕上がりになるとのこと。
4つ目は「賃貸をもっと⾃由に! ⼤作戦」と銘打ち、新たな賃貸物件シリーズ「THE TOSTU」を立ち上げます。生活の多様化に伴い、従来の賃貸物件では対応できなくなってきています。新しい需要の掘り起しを得意とする東通グループは、このような多様化の時代に沿った物件をリリースし、「今までの賃貸物件の常識を覆す」ための試みを展開していくそうです。


「『人が想像できることは、必ず実現できる』というフランスの小説家・ジュール・ヴェルヌの言葉がありますが、私たちの想像を現実のものにしたいという思いからTHE TOSTUをリリースするに至りました。第一弾は品川に『大型ペット共存型賃貸マンション』を建設しています」
屋上にはドッグランを設置。マンションの入口にはペットの足洗い場を設け、大型ペットとの暮らしを楽しむのに最適な物件となっています。

さらに、四谷坂町に建てている「オーダーメイド型賃貸マンション」は、1LDKから3Kまでライフスタイルに応じて柔軟に間取りを変更可能なのが特徴。例えば、壁を取っ払って開放的なワンルームにしたり、寝室やリビングを追加したりするのも可能になります。加えて、オープンスペースを活用すれば、自宅事務や撮影スタジオ、趣味のアトリエなど、暮らしの幅を広げるカスタマイズもできます。
最後の5つ目は「上質な暮らしを⾃由に! ⼤作戦」。
THE TOSTUがスタンダードラインだとすると、それを超えるプレミアムライン「TOSTU PREMIUM」を開発しています。東京一等地で上質な暮らしが可能な賃貸高級レジデンスというコンセプトで、白金台2丁目にオープン予定になっています。

ここで、TOTSU PREMIUMのデザイン監修を行った建築家の隈 研吾さん、高級賃貸でおなじみの株式会社ケン・コーポレーション 常務執⾏役員の髙⼭ ⼀頼⽒が壇上に上りました。
JR東日本とともに、「高輪ゲートウェイ駅周辺の街全体をどうしていくか」という構想を10年以上かけて進めてきた隈氏にとって、白金台はご縁のある場所だと語りました。
海と陸をつなぐことがテーマで、白金あたりから海へ、そして島へと続く。まさに東京にとって非常に重要な軸線上に位置するのが高輪エリアになっています。
髙⼭氏は「ものすごいスピードで成長する東通グループにとって、隈先生がデザインされた白金台2丁目のプロジェクトを成功裏に、高級住宅業界に一石を投じられるような物件にできるよう尽力したい」とコメントしました。
石垣・緑・空の3つの自然的要素が織りなす「白金台2丁目プロジェクト」

イベントの後半では、株式会社arca CEO / Creative Directorの辻 愛沙⼦⽒をモデレーターに交えたトークセッションが行われました。
ブランディングやデザインの会社を経営している辻氏は、東通グループが新聞広告のビジュアルについいて、「不動産業界らしくない、まるでゲームや映画の世界が始まりそうな高揚感や期待感を抱かせてくれるクリエイティブだった」と感想を述べました。

桜木氏は、刺激的で心を動かすようなクリエイティブに込めた想いを次のように説明しました。

「このビジュアルには様々な情報が込められていますが、まず目を引くのは、宇宙空間の中心に地球があり、日本から当社の旗を掲げたキャラクターが、前に向かって力強く走っているシーンです。東通グループの目指すことや考えていることは、一見すると分かりにくいかもしれません。ただ、この文章を読んでいただければ、この社会や業界に対する私たちの強い想いが伝わるはずです。
ほんの些細なことであっても、それを継続することで社会を確実に変えていける。そんな信念を込めて、私たちは日々の取り組みを継続しています。また、ロゴやフォントも、ある有名な映画を彷彿とさせるデザインになっており、そんな遊び心を仕事に取り入れることで、より良い仕事につながると信じています」(桜木氏)
白金台2丁目プロジェクトを手がけた隈氏は「”高輪”は上品な高級住宅地というイメージを超えた、新たな場所に変わりつつある」と話しました。
「高輪ゲートウェイ駅と品川駅はわずか600メートルしか離れておらず、その間はすでに遊歩道でつながっています。品川駅は新幹線が発着するターミナル駅で、名古屋、大阪など日本の主要な場所へアクセスできます。さらには羽田空港とも連動していることから、世界とも結ばれている。まさに、あらゆる“つながり”が生まれることが、このエリアの価値を決定づけていくのではと感じています」(隈氏)
高輪エリアは高い利便性があると同時に、明治学院大学の敷地はかつて信州・松本藩の下屋敷だったりと、歴史的にも武家の屋敷が点在していたことから、高級住宅地としての魅力も備えています。
隈氏は「その周辺に続く立派な石垣は象徴的で、これほど石垣が残る住宅地は東京にあまり多くない。このような土地の記憶を大切にし、今回の建物も石垣のイメージを踏襲している」とデザインへのこだわりにも触れました。
「建物の入り口には石垣があり、その裂け目から中へ入っていくと、そこには緑豊かな庭が広がります。その風景を眺めながら建物の上層へと上がっていくデザインになっていて、『石垣』『緑』『空』という3つの要素を立体的に感じられる空間構成にも注目いただければと思います」

今回発表された「不動産をもっと⾃由に⼤作戦」について、桜井氏は「近い将来には、東通テクノロジーといった新たな関連会社の立ち上げも視野に入れて動いている。現在、趣味や職業に特化した住まいのあり方にも注目しており、防音設備を備えた配信者専用住宅など、今までにないユニークなコンセプトを持った住空間を提供していきたい」と抱負を語りました。
人口が半分になる50年後は「自然への回帰」が進む
続いては「不動産業界の未来」をテーマに、各登壇者が所感を共有する場となりました。まずは10年後の近未来について、どのような建築物が社会に増えていくのかという問いを辻氏が投げかけたところ、隈氏は「コロナ明けの現在はすごく大きな時代の変わり目になっている」と見解を示しました。
というのも、建築デザインの分野ではコロナ禍以降、環境への配慮や持続可能性という考え方が非常に重要視されるようになったからです。パンデミックを経験したことで、従来の住まいや都市では精神的・肉体的に限界があると感じ始めたのが、その動機を強めたと言えるわけです。世界に目を向けると、ヨーロッパやアメリカは環境対応に積極的なのに対し、「日本は比較的遅れており、環境意識の面ではスロースターターと言える」と隈氏。
中国においても、省エネの観点からガラスの大きさや種類に制限があるなど、建築における環境規制が厳しくなっていると言います。

そういう意味でも、「今後10年間は、環境や緑、持続可能性といったテーマが極めて重要になってくる」と隈氏は言及しました。また同時に、コロナ以降でリモートワークが定着したことで、「働く場所はオフィス、住む場所は自宅」という前提そのものが大きく変わろうとしています。
「これまでの集合住宅やマンションは、新しいライフスタイルに対応していませんでした。なので、これからの住まいには、単なる間取りの工夫だけでなく、仕事と暮らしが混ざり合うことを前提にした空間づくりやデザインが求められるでしょう」(隈氏)
桜⽊氏は「10年後の近未来においては、不動産取引や手続きの多くが“全自動化”され、デジタル化が当たり前になっていく」と述べました。
では、50年後の不動産業界の未来はどのようになっているのでしょうか。
半世紀という大きなスパンの中で、「日本の人口が今の半分近くまで減少する」ことを隈氏は挙げました。

「今から50年前の1975年頃の日本の人口は、今とほとんど変わりませんでした。そこから50年はぼぼ横ばいで推移していた人口が、これからの50年で劇的に人口構造が変わります。つまり、激動の50年を生き残るために、今のうちから将来の社会に通用する価値観やデザインを考え、50年後を見据えた住まいづくりをしていかなければなりません」
さらに、人口が減少していくなかで、贅沢の価値観や自然との付き合い方も変わってくると隈氏は付け加えました。
「これまでの人口が増え続けた時代は、自然から遠ざかってきましたが、これからは『自然への回帰』が求められる時代へとシフトしていくと考えられます。住宅の中に自然を取り込む設計もあれば、都市と自然を行き来するライフスタイルが当たり前になるかもしれません。こうした変化に対応する建築のデザインを、私たちは本気で考えていく必要があるでしょう」
50年後はテクノロジーが進化するスピードもさらに加速することから、不動産業界も大きな転換期を迎えるのは間違いありません。今まで保守的だった日本の不動産業界も、従前のやり方では通用しなくなってくる。だからこそ、どのように変わるべきかが問われる時代に入っていくのかもしれません。
最後に登壇者が不動産業界の未来に対するメッセージを述べ、会を締めくくりました。
「大きく変化する未来を見据え、新しい住まいや空間のあり方を真剣に考えていくことが大事ですし、ビジネスの視点でも新たな企画や戦略が必要になるでしょう。東通グループの取り組みが、その変革を考えるきっかけとなり、何か新しい視点を持つヒントになることを願っています」(隈氏)
「私たちがビジネスを行う不動産業界に対して、『何かを変えていきたい』という意識を持ち、世代を超えて挑戦していくのを使命に、新しい未来を創っていければと思います」(桜木氏)
「人間というのは本質的に目に見えないものに対して不安を感じたり、手に取れないものに対して疑念を抱いたりしやすいと思っています。それでも、誰かが一歩を踏み出さないと、新しい価値は生まれません。私たち東通グループも革新性を軸に、これまでにない取り組みを推進していきたいと考えています」(桜井氏)