地方から世界基準の人材が育つインキュベーション拠点を目指すをモットーに一般社団法人higocolorと共同で熊本県玉名市にインキュベーション施設「BIGLOBEイノベーションベース・タカセカラ」が開設されました。

インキュベーション施設「BIGLOBEイノベーションベース・タカセカラ」

インターネットプロバイダ事業などを展開するビッグローブ株式会社は、熊本県で地域のイノベーションを目指す一般社団法人higocolorと共同で熊本県玉名市にインキュベーション施設「BIGLOBEイノベーションベース・タカセカラ」を開設。

その開設式が3月13日に行われ、施設のコンセプトや概要が紹介されました。

市内企業のDX化や地域のデジタル教育を推進するほか、国内の他地域や海外ともつながりを持ち、「地方から世界基準の人材が育つ拠点」を標榜する本施設。

ここでは「玉名(たまな)ってどこ?」という方にも興味を感じてもらえるよう、この地域が持つ魅力と併せて開設式の様子をお伝えしていきます。

BIGLOBEが地域のDX推進&デジタルリテラシー充実を後押し

熊本県北部、JR熊本駅から在来線で約30分の距離に位置し、人口約6万2千人を擁する玉名市。

その地域の歴史と密接に結びつく菊池川沿いにある高瀬商店街の一角に新たに開設されたのが「BIGLOBEイノベーションベース・タカセカラ」(以下、タカセカラ)です。

広さ80㎡の館内はかつて生地店だった建物をリノベーションした空間。

4月にグランドオープンを予定しているとのことで、この日はまだ内装の完成前でしたが、梁や壁には商店だった往時の状態が残されています。

(BIGLOBEイノベーションベース・タカセカラ)

開設式には、ビッグローブ株式会社(以下、BIGLOBE)の横山克也副社長、一般社団法人higocolor(以下、ヒゴカラ)の上平健太代表ら両社の関係者のほか、同市の藏原隆浩市長も来賓として出席。

冒頭の挨拶で「九州の皆様に我々の良質なネットワークを提供したい」と話した横山副社長は、同社が昨年秋に九州地域の態勢強化の一環として福岡県内にネットワーク拠点を開設したことに触れつつ、その動きが本施設に参入するきっかけとなったと説明。

また、自らも九州生まれ九州育ちであることから「九州の地方ビジネスを日本全国に展開していく第一歩として、本施設が成功の一助になれば」と熱い思いを披露しました。

(ビッグローブ株式会社の横山克也副社長(左)と玉名市の藏原隆浩市長(右))

続いて来賓を代表して祝辞を述べた藤原市長は、「デジタル技術の進歩が激しい現代において、本市においても企業のDX推進、また市民のデジタルリテラシーの充実が急務になっています」と市の抱える課題を述べつつ、その解決のキーとなりうる本施設への大きな期待感を強調。

また、「何より嬉しいのは輝かしい歴史、そして伝統文化を有するこの高瀬商店街に施設を設けていただいたことです」と顔をほころばせながら話し、本施設の発展にエールを送るとともに市としても包括的な協力を行っていくことが約束されました。

商人の気風流れる町に誕生した新インキュベーション施設

タカセカラがある玉名市の高瀬地区は、14世紀の南北朝時代から物資の集積地として国際貿易も行われていた、かつての港町。

菊池川を利用した舟運業が盛んで、上流域で獲れた米を保管する蔵の町としても栄えました。

当時商いで財を成した人々は「高瀬商人」と呼ばれ、本施設の裏手にある裏川筋には今も当時の面影をしのばせる家並みが見られます。

(裏川筋の家並み)

そうした商人の気風流れる町に生まれたタカセカラについて、ヒゴカラの上平代表は「選択肢のある地域を共創し、世界基準の人材が育つ拠点にしたい」と力説。

(一般社団法人higocolorの上平健太代表)

その上で「少子高齢化や人口流出の余波でいろんなことの選択肢が少なくなり生きづらい人が増えることが、これからの地方の本質的な課題だと感じています」と述べた同氏は、「いろんな方と連携して選択肢を作ることで地域を盛り上げていきたい」とし、本施設が提供する主な機能として、コワーキングスペース、起業およびビジネス拡大の支援、セミナーやワークショップの実施、交流会の開催という4点を紹介。

さらに当初想定する具体的なコンテンツとして「子ども向けアート系ワークショップ」や「外国人をゲストに招いた交流会」「BIGLOBEと共催するインターネット教室」などをあげ、「高瀬らしさを高瀬から世界に発信し、高瀬だから選ばれる拠点にしたいと考えています」と意気込みを語りました。

地元大学生が温故知新でデザインしたタカセカラの空間

本施設のもうひとつの特徴は、内装デザインに地元の大学生が関わっている点です。

この日はその参加メンバーである熊本県立大学環境共生学部居住環境学専攻の石田勇気さんと中村紗也佳さんからコンセプトの発表が行われました。

熊本県立大学環境共生学部居住環境学専攻3年の参加メンバー。左から石田勇気さん、井上芙保さん、泉田花芙さん、中村紗也佳さん、松山昂平さん。

生地店時代の名残と現代風の新しさを融合し、「過去×未来」「人×人」「高瀬×世界」という3つのキーワードを意識して構成された空間には、利用者同士の絆を創出するタイル張りのカウンターキッチンやコミュニケーションや連帯感を生む黒板、高瀬絞りに代表される伝統工芸品や地域のアーティストの作品を展示するチャレンジ棚などを設置。

(タイル張りのキッチン(イメージ))
(黒板(イメージ))
(可動式の畳(イメージ))

その中でとりわけユニークだと感じたのは、ワークスペースにフレキシブルさを生む可動式の畳で、プレゼンを行った石田さんは「人数やシチュエーションに応じて柔軟に形を変え簡単に移動できる畳は、コミュニケーションの促進と絆が生まれる空間を作り出します。

また、日本の文化である畳に座り、おにぎりなどの日本食を楽しむイベントを開催することで、タカセカラを通して高瀬が世界と繋がるきっかけを作ります」とデザインの意図を説明しました。

次は通信の力で“貿易の港”になることを目指す

BIGLOBEがこの規模感の自治体に設置されるインキュベーション施設に協力するのは初とのこと。

商店街の中にはFAXを使用している店舗も少なからずあるそうで、関係者からは「玉名のような都市部の周辺地域でインターネットにどんなニーズが求められるのかを知る機会にしたい」と本施設を試金石とする期待の声が。

一方で、ヒゴカラは半導体企業の進出で熊本とのつながりが昨今強まる台湾に加えインドの企業とも交流があり、本施設の誕生によって玉名と海外をつなぐ取り組みが加速することが予想されます。

(高瀬川鉄橋がかかる菊池川)

なお、帰りに周辺を散策してみると、まずは裏川筋の風情ある景色に感動。

石垣の上に立つ商家の家並みはもちろんのこと、川筋には熊本城の武者返しで知られる築城の名手・加藤清正公の命で整備が始まった船着き場の跡地や同じく江戸時代に造られた2つの眼鏡橋が見られるほか、“西南戦争の関ケ原”と呼ばれる高瀬大会戦ゆかりの地や菊池川にかかる大正時代建築の高瀬川鉄橋など、歴史ファンならきっと萌えるに違いないスポットがいっぱい。

秋丸眼鏡橋 ちなみに初夏には菖蒲の花が裏川筋一帯を染め上げるそうで、その時期に花を愛でながらの青空ワークというのも魅力的。

また、市内には「玉名温泉」の温泉街やタカセカラ以外のコワーキングスペースもあり、ワーケーションの旅先としてもおすすめだと感じました。

市民の方の利用はもちろん、市外の方もタカセカラの利用を足掛かりに玉名の企業や人とイノベーションを起こすきっかけを作ってみてはいかがでしょう。

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